3.娘さんをください



 



ナオ:お父さん、初めまして。れなさんとお付き合いをさせてもらっている七島といいます。
   ……単刀直入に言います。お父さん、娘さんを、僕にください!

ゴウ(父):…いいよ。

ナオ:確かに、お父さんが戸惑うのも無理はないと思います。しかし…………えっ?

 父:いいよ。娘。

ナオ:……いいんですか!?

 父:いいよ。

ナオ:いいんですか!?まだ来て1分も経ってないですけど!?

 父:いいよ。

ナオ:…ありがとうございます!!

れな(娘):……ね、言ったでしょ。お父さんなら話を分かってくれるって。

ナオ:あ、ああ、本当にそうだね……

 娘:…そうだ、あのこともお願いしてみたら?

ナオ:あのことって……いや、いくらなんでも無理だよ…。

 娘:大丈夫、お父さんならわかってくれるから。

ナオ:ホントに?……あのお父さん。実は、もう1つお願いしたいことがありまして………
   ……実は僕、先日事業に失敗して多額の借金があるんです…………でも!もう1回起業して、その分を取り戻そうと思ってるんです!
   そこで、その元手となる1000万円を援助していただきたくてですね……

 父:いいよ。

ナオ:いいんですか!?結構な大金ですけど!?

 父:いいよ。……ちなみに、どんな会社なんだ?

ナオ:ええとですね……IT企業「アライブドア」というのを……

 父:…………いいよ。

ナオ:いいんですか!?…自分で言うのもなんですけど、パクリですよ!?

 父:いいよ。

ナオ:なんなら前回、楽天をもじって「バク転」って名前で失敗してますけど!?

 父:いいよ。

ナオ:いいんですね!?もじってとか言っちゃってるけどいいんですね!?

 父:ほれ、小切手だ。

ナオ:うわあ…ありがとうございます!!

 娘:ね、お父さんなら話をわかってくれるって。

ナオ:…わかりすぎだよ。これはもう聖人君子のレベルだよ……ありがたすぎてちょっと怖いもん……

成実(母):あら、貴方が娘とお付き合いしている七島さんね?

 娘:あ、お母さん!

 母:…ふふ、とても誠実そうな青年で安心したわ。娘をこれからもよろしくね。あ、お茶を淹れてきたから、よかったらお召し上がりになって。

ナオ:あ、すみませんありがとうございます……(ずずず)……れなちゃんのお母さん?

 娘:そうだよ。

ナオ:へえ…………(チラッ)お母さん、めちゃめちゃ美人だなあ。しかも優しいし。うわぁいいなあ、僕、年上も大好きなんだよなあ…………
   …………あの、お父さん。

 父:なんだね。

ナオ:あの、もしよかったら………………奥さんも、僕にください!!

 父:……ダメだ!!

ナオ:………………あ、さすがにダメですよね。そうですよね、ごめんなさい……

 父:「奥さん」じゃないだろう!君にとってはもう「お母さん」だろう!!

ナオ:……あ、呼び方の問題!?そこですか!?じゃあ…………お母さんを、僕にください!!

 父:いいよ。

ナオ:いいんですか!?呼び方一つでもういいんですか!?

 父:いいよ。

ナオ:ありがとうございます!!うわぁ言ってみるもんだな……

(母、ナオの横に移動)

ナオ:お母さん来てくれるんだ。……それにしても、お父さんいいなぁ、なんでもくれるなあ……そうだ。そしたら、あの、そこにある高そうな壺とか……

 父:いいよ。

ナオ:そこの立派な掛け軸……

 父:いいよ。

ナオ:いっそこの家の土地全部……

 父:いいよ。

ナオ:いいんですか!?ホントにいいんですか!?

 父:……金の延べ棒。(机の下から金の延べ棒を取り出す)

ナオ:……いいんですか!?え、もう自分から差し出してきた!?

 父:いいよ。

ナオ:いいんですね!?土地も、いいんですね!?ここにさっきのヘンテコな会社建てますよ!?あ、自分でヘンテコって言っちゃった。

ロボ:ウイーン ウイーン

ナオ:……ん?

 父:七島くん。これはな、実は、私が作ったロボットなんだ。

ロボ:Que rabia! Mierda! Demino!!

 父:ただ、スペイン語で罵倒してくるだけのロボットなんだがな。

ナオ:……はあ。

 父:しかし、スペックは高性能でな、動きはもう人間そのもの、音声認識や画像認識能力にも優れており、超高温・超低温・かなりの衝撃にも耐えられる。

ロボ:Que rabia! Mierda! Demino!!

 父:スペイン語で罵倒してくるだけのロボットだがな。

ナオ:……はあ。

 父:………………君にやろう。

ナオ:……えぇ何かよくわかんないの貰ったー!?これに関してはなに、すごいやつなのすごくないやつなの!?

(ロボ、ナオの後ろに来る)

ナオ:うわあ来た。…………大所帯だな。

ロボ:Vete la Mierda!!

ナオ:罵倒された…………いいや、これは後でパーツごとで金物屋とかに売ろう……
   (湯のみに手をつける)……あ、なくなってたんだった。
   あの、お茶のおかわりを頂いても……

 父:ダメだ!!

ナオ:ええええええええ!?

 父:ダメだー!!ダメだー!!ダメだー!!

ナオ:ええ!?お茶はダメなの!?あんだけいろいろくれたのに!?

 父:全く、なんて図々しい奴だ!!……やっぱりお前には、娘はやらん!!

ナオ:ええええええええ!?

(娘、父の側に移動)

ナオ:あっ、れな!行くなよおい!?

 父:それから1000万も妻も金の延べ棒も土地も、全部没収じゃこの!!

(母、父の側に移動 金の延べ棒もひとりでに父の方へ移動)

ナオ:え、え、ちょっと!?あ、お母さんも!!……ええっ、積み立てたもの一気に失った……そして、ロボは残るのかよー!?一番処理に困るんだけど……

ロボ:Que' bestia!!

ナオ:罵倒された…………え、どうしよう…………とりあえず、もう一回言ってみるか。
   ……お父さん。娘さんを、僕にください!

 父:いいよ。

ナオ:いいんですね!?没収しといてあっさりいいんですね!?

(娘、ナオの側に行く)

ナオ:おお、お帰り、れな。よしじゃあ…お父さん。1000万円を僕にください。

 父:いいよ。

ナオ:お母さんを僕にください!!

 父:いいよ。

(母、ナオの側に移動する)

ナオ:高そうな壺を僕にください!!

 父:いいよ。

ナオ:立派な掛け軸を僕にください!!

 父:いいよ。

ナオ:ここの土地全部僕にください!!

 父:いいよ。

ナオ:金の延べ棒僕にください!!

 父:いいよ。

ナオ:ついでに100カラットのダイヤも僕にください!!

 父:いいよ。(ダイヤを渡す)

ナオ:いいんですね!?いいんですね!?うわ簡単にさっき以上に積み立った!!
   (湯のみに手を付ける)あっお茶おかわりもらえないんだった…………どうしようかな……
   ……あ、あのお母さん。

 母:どうしました?

ナオ:お茶のおかわりを頂いても……

 母:ダメだ!!

ナオ:ええええええええ!?やっぱダメー!?……この家お茶に関して厳しい!!

 母:ダメだー!!ダメだー!!ダメだー!!

(娘、父の方に戻る)

ナオ:あっ、れな待って……

 母:(ナオを蹴る)

ナオ:うぐっ!

(母、父の側に戻る)

ナオ:なんで蹴られたの……で、なんでみんな戻っちゃうの…………

ロボ:Hijo de puta!!

ナオ:罵倒された……

 父:さあ、七島くん。…………次は、なにが欲しいのかね…?

ナオ:……ゲームだ。これはゲームだ……!!1個も選択を間違えられない…………どうしよう、ちょっと、考える時間をください……

 父:ダメだ!!

ナオ:えええええええ!?考える時間もダメー!?

(父、ナオのネクタイを引きちぎる)

ナオ:ぐっ!……ええ、マイナスもあるのかよ……どうすれば……
   ……よしここは直感を信じていこう。お父さん。…………お母さんを、僕にください!!

 父:いいよ。

ナオ:いいんですね!?明らかに1個目じゃないやつ持ってきたけどいいんですね!?

(母、ナオの方へ行く)

ナオ:お母さんもいいんですね!?…うわー楽しくなってきた。次どれいこうかな……

ロボ:(母に向かって)Que' bestia!!

 母:罵倒された……

(母、父の方へ戻る)

ナオ:ええええええええ!?罵倒されて帰っていったー!?……あぁもう1回だ!お母さんを僕にください!!

 父:いいよ。

ロボ:Que' bestia!!

 母:罵倒された……(やっぱり戻る)

ナオ:娘さんをください!!

 父:いいよ。

(娘、男の方に行こうとする)

ロボ:Que' bestia!!

 娘:罵倒された……(やっぱり戻る)

ナオ:うわー!!全然お母さん達もらえない!!

ロボ:Que rabia! Mierda! Demino!!Que rabia! Mierda! Demino!!……

ナオ:くそう、罵倒バリアーを張られてしまった…………コイツ、なんとかならねえのかクソッ!(ガンガン!!)

ロボ:(ぷしゅぅぅぅぅ)…………。

ナオ:…あれ?叩いたら壊れたかな……

ロボ:…………キユーピー。キユーピー。キユーピー。

ナオ:…なんかモードが変わった!?なんでキューピーの正式な社名を言い続けてるかわかんないけど……
   ……よしでもこれで罵倒もなくなったし、いけるぞ!お父さん。お母さんを、僕にください!

 父:いいよ。

(母、ナオの側に移動)

ナオ:1000万円を、僕にください!

 父:いいよ。(小切手を渡す)

ナオ:金の延べ棒を僕にください!!

 父:いいよ。(金の延べ棒を渡す)

ナオ:あとは…………ああもうめんどくさい!……お父さん、お父さんの持ってるもの、全部ください!!

 父:いいよ。

ナオ:いいんですね!?いいんですね!?…やった、完全勝利だ!!

 父:ハッ!!(手をナオの方に向けて)

ナオ:ん?(肩を気にしたあと、腕をあげてみようとする)……うわ、四十肩持ちだ。

 父:はははは、君の勝ちだな。肩の荷が降りたよ。……ところで、私は家を失ってしまったので、君の家に泊めてもらえないだろうか。

 母:それ、土地を全部あげちゃったからでしょ!

 父:そういえばそうか!

ナオ・父・母:あはははは!!

ロボ:キユーピー。キヤノン。キヤノン。キヤノン……

(ナオ・父・母、談笑しながら出て行く。ロボもついていく)







 娘:…………って私だけもらわれないんかーい!!!いい加減にしろ!!!

ロボ:(戻ってきて)Hijo de puta!!

 娘:罵倒された…………

 


next is ...

<告白>





 

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