7.男女音楽ユニットと
  ラジオDJのお話




ナオ:………はい。というわけでお送りした曲は、5月30日にリリースされますお二人の新曲「cube」でしたー。いやあ、いい曲ですね。

ゴウ:はい、ありがとうございます!

ナオ:成美さんはどうでしたか、レコーディングで歌ってみて?

成美:そうですね……アップテンポの曲だったので、歌ってて楽しかったですね。

ナオ:なるほどー。……しかし、お二人の曲を聴いているとなんだろう、それぞれの音が合わさったときのハーモニー、これには毎回驚かされますね。

ゴウ:またまた、上手いこと言いますねー。

ナオ:いえいえ。もう二人、夫婦なんじゃないかってぐらい息が合ってますよ。

ゴウ:そんな夫婦って!夫婦って!ははは……

成美:………。

ナオ:……えー、時刻は10時30分を回ろうとしています。七島ナオのミュージックフィーバー、今日は男女音楽ユニット「プライマリー」の成美さん、GOHさんとともにお送りしております。
    ………さて、ここからはリスナーからお二人への質問がたくさん届いていますので、そちらの方を読んでいきたいと思います。ね、ほんとに目を通すのが大変なくらい質問が届いてるんですよ。

ゴウ:そんなにですか!いやー、ありがとうございます。

ナオ:では早速読んでいきましょう………ラジオネーム「からすみ」さんから頂きました、ありがとうございます。

成美:ありがとうございます。

ナオ:「お二人に質問です。お二人が一緒に音楽をやることになったきっかけを教えてください。」……ということですが。確かに、僕も気になりますねー。どうやって出会ったんですか?

ゴウ:えーっとですね………最初、僕がストリートでギターを弾いていたんです。

ナオ:ほお。

ゴウ:まあ、最初は聞いてくれる人はいなかったんですけど……でもある日、立ち止まって聞いてくれる女の子がいたんです。

ナオ:もしかして、それが、成美さんなんですか?

成美:………はい。

ゴウ:それで、せっかく立ち止まってくれたのでいろいろ話をして………そのとき、成美も歌手を目指しているということを知って。

ナオ:それで、一緒にやろうと。

ゴウ:はい。で、幸運なことに、二人でやり始めてからすぐ、レコード会社からデビューの話が来て………これはやっぱり、運命だったのかな、って思いますね。

ナオ:なるほどー、すごいですね……成美さんはやっぱり、ゴウさんのギターに惹かれて、立ち止まったんですか?

成美:え、えっと……はい、そうですね。

ナオ:なるほど………えー、では次の質問にいきましょう。ラジオネーム「もこたん」さんから頂きました。ありがとうございます。

ゴウ:ありがとうございますー。

ナオ:「お二人に質問です。お二人は今、付き合ってる人はいますか。」……ということですけども…。

ゴウ:またプライベートな質問ですねー。

ナオ:…GOHさん、どうですか?

ゴウ:えー、そうですね……彼女はいないんですけども、まあ、ね。いるようなもんじゃないですか、今!

ナオ:………えーっと、成美さん。どうでしょう?

成美:……………………います。

ゴウ:………はい?

ナオ:…そうですか。なんと、彼氏がいる、ということでね。これはまた新事実が………

ゴウ:ちょっとまっ、待って……………えっ、彼氏いるの?

成美:……いるけど、それがどうかしたの?

ナオ:…えー、では次のコーナーに……

ゴウ:………相手誰だよ?

成美:…別に、あなたには関係ないじゃない。

ゴウ:まさか、俺が知ってるやつ?…プロデューサーか?

ナオ:…GOHさん!GOHさん、ね。プライバシーもありますし、なにしろこれラジオですから。無理して聞かなくてもいいですよ。

ゴウ:……………。

ナオ:……えー、では次のコーナーに行きましょう!…なんと!今回、お二人に生で演奏をしてもらえるということなんですよね?

成美:はい、そうですね。

ナオ:というわけで、準備の方、よろしくお願いします。

ゴウ:……………。

ナオ:……GOHさん?

ゴウ:世界は静止した………

ナオ:いや、何言ってるんですか………あの、ギターを……

ゴウ:はいはい……

ナオ:………………えー、では準備ができたということでね。それでは曲紹介、よろしくお願いします。

成美:はい、プライマリーで「あなただけに捧げる歌」。

ゴウ:………(ジャカジャーン)

成美:♪あなーただけに 捧げーる歌ー

ゴウ:(ジャカジャーン)

成美:♪あなーただけに 伝えーる言葉ー

ゴウ:…誰だよあなたって(ジャカジャーン)

ナオ:……GOHさん?

成美:♪聞いて わたーしはー

ゴウ:…聞くな聞き流せ(ジャカジャーン)

ナオ:…GOHさん?なんか変な合いの手みたいになってますよ…

成美:♪あなーたをー 愛してーるー

ゴウ:…まあすぐ捨てるだろうね(ジャカジャーン)

ナオ:そんなこと言わないでくださいよ……

成美:♪すべーてをー 捧げてもーいいー

ゴウ:…体だけは許さん(ジャカジャーン)

ナオ:いや、何言ってるんですか!

成美:♪私はもうー あなただけのものー

ゴウ:……そんな、そんなはずは………(ガタン)

ナオ:どうしたんですかちょっと!ギター落としましたよ。

ゴウ:もう誰かのものか!…もう誰かのものなのか成美ぃぃぃぃぃ!!

ナオ:何言ってるんですかさっきから!成美さん関係ないですよ、歌の中の話でしょ!

ゴウ:成美…誰なんだ!誰なんだ相手は!!どこの馬の肉だ!!

ナオ:いや、馬刺しになってますよ…

成美:だから、誰と付き合おうが勝手でしょ。関係ないわよアンタとは。

ゴウ:付き合うにしてもな!なんで俺に、俺に言わないんだ!!

成美:はあ?なんでアンタなんかに言わなきゃいけないのよ。

ゴウ:だってお前、俺たちは付き合ってるも同然だったじゃないか!

ナオ:ちょっと!ちょっとやめましょう二人とも……

成美:……あーあー。だからアンタには言いたくなかったのよ………

ゴウ:…どういうことだよ。

成美:……付き合ってるも同然?なに言ってるのよ、それはアンタの思い込みだから。

ゴウ:………思い込み…?

成美:そうよ。っていうかね、どっちかというとアンタのこと、嫌いだから。

ゴウ:……………。

成美:いつもいつもね、俺はお前の恋人だ、みたいな立ち振る舞いしてさ。なに思い上がってんのよ、鬱陶しくて仕方ないのよ!

ゴウ:で、でも!そっちが最初に好きになってきたことだろ!

成美:………はああ。

ゴウ:…な、なんだよ?

成美:それも思い込みよ思い込み。

ゴウ:……嘘っ!

成美:…ホント自意識過剰よね。アンタのことなんか好きになるわけないでしょ、バカじゃないの。

ゴウ:そんな………俺が路上でやってるのを、立ち止まって聞いてたのは一目惚れじゃなかったのか!?

ナオ:そっから勘違いだったんですか。

成美:ああそれね。…今だから言うけど、あれ、罰ゲームだったのよ。

ゴウ:………罰…ゲーム?

成美:そう。……知らないかもしれないけど、あんた、あの頃変人として有名だったのよ。

ゴウ:へ、変人!?俺が!?

成美:だってアンタ…誰もいないのに一人MCとかしてたじゃない。

ゴウ:それはなんか、気分が乗って…

成美:「次の曲は、俺が恋をしたときに、作った曲です…………この中で今、恋をしてる…って人、いますか?」…まず誰も聞いてないっての!

ゴウ:なんだ!10人は手を挙げてくれた設定だったぞ!

ナオ:設定って……

成美:だから、罰ゲームで、誰かその変人に話しかけようってなったの…………で、私が負けたってわけ。

ゴウ:そんな………

成美:で話しかけたらまた、ウダウダ話に付き合わされてさ。挙句の果てには、ちょっと歌手を目指してるって言ったもんだから、「歌ってみない?歌ってみない?」って……。ホントウザかったわよ。

ナオ:……でも、結局はお二人で音楽をやることになったじゃないですか。それはどうしてですか?

ゴウ:それは…俺のギターの音色に惹かれたんだろ?

成美:いや、別に。

ゴウ:……え、違うの?

成美:ちょうどそのとき、レコード会社の人が話しかけてきたじゃない。あれがなかったら、アンタとやることなんてなかったわよ。

ゴウ:……………。

成美:まあ歌手になりたかったのは事実だし。とりあえずレコード会社に拾ってもらって、あとでソロでアンタを捨ててもいいと思ってたの。

ゴウ:そ、そんな………

成美:なんだかんだでグダグダやってきたけどね、アンタほどのギターの腕、たいしたことないのよ。
    売れたのはすべて自分のおかげ、とか思ってる節だけど…そんなわけないでしょ!バカじゃないの。

ゴウ:……………。

成美:大体ね、アンタは………

ナオ:ちょっとやめましょう!

成美:っ………。

ナオ:…やめましょう、ね!………成美さんも言い方キツイですから!

ゴウ:………なんだお前!このっ…!(ぐぐっ)

ナオ:ちょっ…なんなんですか急に!

ゴウ:あんたがあんなメール読むから!あんなメール読むからこんなことになったんだよ!!(バシッ)

ナオ:いや、ただの八つ当たりじゃないですか!やめてくださいよ!

成美:……ちょっと!ナオくんは何も関係ないでしょ!!

ゴウ:うるせえ!こいつが……………「ナオくん」?

成美:……………。

ナオ:……………。

ゴウ:………どういうことだ…お前、まさか……!

成美:そうよ…………私、彼と付き合ってるの。

ゴウ:な…………!

ナオ:……………。

成美:……これでいいでしょ。私が付き合ってるのはナオくんなの。分かった?

ゴウ:そんな………おいそこのDJ野郎!この話…本当なのか!?

ナオ:え、えーっとあの………

ゴウ:………そうか、そうなのか……ははは…。

ナオ:いや、だからですね………

ゴウ:クソッ!…どこまでの、どこまでの関係だお前ら!

成美:なによ、それこそアンタに関係ないでしょ。

ゴウ:クソッ、こんなDJ野郎とくっつきやがって!………夜な夜な放送事故でも起こしてんのか!

ナオ:いや何言ってるんですか!

ゴウ:なんだ、「俺のマイクはON AIR中」ってか!?ああ?

ナオ:なんすかそのセンスのない言葉!死んでも言いませんよ!…あの、その前にですね………

成美:…これで分かったでしょ?すべてはあなたの思い過ごしなのよ。

ナオ:いやあの、そうじゃなくて…………………成美さん?

成美:なあに、ナオくん?

ナオ:あの……………僕、成美さんと付き合った覚え、ないんだけど。

成美:…………えっ?

ナオ:いや…まず、そんなに知り合いってわけでもない…よね。

成美:……嘘っ!

ナオ:嘘もなにも、ねえ………

成美:だ、だって!この前、一緒になったじゃない………?

ゴウ:お、お前!やっぱり…!

ナオ:いや、なんの話ですか!知りませんよ!

成美:覚えてないなんて言わせないわよ……。ほらこの前、ラジオで一緒になって……

ナオ:一緒にラジオやっただけじゃないですか!確かにこの前、ゲストで来てくださいましたけど。

成美:で、でも!そのときナオくん、私のこと、好きになってたでしょ…?

ナオ:え?えーっと…………………根拠は?

成美:根拠も何も、ナオくん、ずっと私の方を向いていたでしょ……

ナオ:そりゃラジオですから!ゲストの方を向かないと話にならないでしょ!

成美:な、なによ……最後に、私の目を見てこういってくれたじゃない……

ナオ:……なんか言いましたっけ。

成美:「ぜひ、また遊びに来てください!」…………って。

ナオ:いや、社交辞令ですよ!言っちゃ悪いですけど、ゲストの人みんなに言ってますよ!

成美:えっ…………ナオくんが、そんな浮気者だったなんて……

ナオ:それ以前に付き合ってませんって!

ゴウ:……ハハハ!勘違いしてやんの!

ナオ:いや、あなたは人のこと言えないですから!

成美:そしてその後、プロポーズまでしてくれたのに……

ナオ:…いや、それも勘違いでしょ!そんなこと言った覚えないですから!

成美:でも、こう言った………「また、一緒にやりませんか」……って。

ナオ:たぶんだけど、それ、今回のラジオのオファーでしょ!ラジオやりましょうってことですよ!

成美:でも……ナオくん確実にそう言ってたって、プロデューサーの人が言ってたもん!

ナオ:…いや、まずプロデューサー越しに告白はしないでしょうよ!ただの仕事の依頼ですから!
    それに、GOHさんも一緒ってことになってたでしょ。

成美:それは……仲人役だったんじゃないの?

ゴウ:都合のいい解釈だな!

ナオ:いや、だからあなたが言える立場じゃないですから!なんなんすかこの勘違いユニットは!!

ゴウ:………そうだ、成美に謝らなきゃいけないことがあったんだ。

成美:……何よ急に。……私への勘違いのこと?

ゴウ:いや。実は…………………俺、浮気してたんだ。

ナオ:…勘違い前提の話じゃないですかそれ!

ゴウ:どうしても断れなくて……体の関係を…。

成美:いや………別に、アンタが誰かにくっついてくれるならそれで満足だけど。

ゴウ:ただな…………その相手、コイツなんだよ。

ナオ:……………えっ僕!?

成美:なっナオくん!?あなたまさか……!

ナオ:いや、誤解!誤解ですから!なに言ってるんですか急に!

ゴウ:お前が誘ってきたことじゃないか、お前が……!

成美:ナオくん、不潔………

ナオ:いやいやいや!根も葉もないこと言わないでくださいよ!

ゴウ:でも!お前、こう言っただろ…………「一緒にやりませんか」って。

ナオ:…だから!それこのラジオのオファーでしょうが!ユニットで同じ勘違いしやがって!

ゴウ:それだから今日……いろいろとムズムズしてたのに………

ナオ:いやお前、やる気マンマンか!あんたの方が変態じゃないか!

ゴウ:俺のマイクもON AIR中………

ナオ:それいいよもう!やっぱアレか!勘違い度合いはこっちの方が上か!

ゴウ:だから、後ろめたかった………成美と付き合ってるのに、コイツと……

ナオ:…いや、だからそれ勘違いだし、成美さんとも付き合ってないでしょ!あんた、二重の勘違いじゃないですか!!

成美:そんな………ナオくんが、しかも男と浮気してたなんて……

ナオ:それも誤解!まずあなたと付き合ってもいない!!

ゴウ:クソッ!もうどうにでもなるがいい!……お前がホモだって、このラジオで言ったやったからな!お前の醜態は晒してやったぞ!!

ナオ:いや、どっちかというとあなた達の醜態の方が流れてますから!!さっきからいろいろ酷いですわもう!!

成美:…このDJ、ゲストに来た人みんな襲ってるのよ!

ナオ:あんたも何デマ流してんだよ!それ、割と信じる人いそうだからやめろ!

ゴウ:ミュージックフィーバーだけに、いろいろとフィーバーしてるんでしょうね……

ナオ:何言ってんだよ!あんた、さっきから上手いこと言ってそうで言えてねえよ!
    ………ちょっと、もうぐちゃぐちゃですよこのラジオ!訴えますよ!!

ゴウ:そうですか………なら、最後に1つだけ。

ナオ:…なんですか。

成美:私たち、あと1つ勘違いをしていました。

ナオ:まだ勘違いしてたんですか………なんですか、今度は。

ゴウ:実は僕ら、プライマリーではありませんでした。

ナオ:…………は?

成美:私が「成美」、コイツが「GOH」…………それはすべて勘違い。

ナオ:………ど、どういうことだよ?じゃあ、あんたら何なんだよ…!

ゴウ:私たちなんて………いないんですよ。

ナオ:………えっ?

成美:存在しないの、この世には。……私たちは、あなたの………











ナオ:……………そうか。

    すべては僕の、勘違い……

    ………妄想、に過ぎなかったんだ。


 











<act.8>






 




 

 
   
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