4.高校講座生物




ナオ:あー平日の休みって暇だなあ…。なんかテレビでも見ようかな(ポチッ)

ゴウ:…皆さんこんにちは。高校講座生物の時間です。今日も楽しく生物の勉強をしていきましょう。

ナオ:へー理科の講座がやってるんだ。久々に見てみようかな。

ゴウ:今月は、「さまざまな生き物の生態」というテーマでお送りしています。
    生き物の生態とは、とても興味深いものです。この講座でそんな生き物の神秘、に少しでも触れてほしいと思います。

ナオ:生き物の神秘、か。おもしろそうだな。

ゴウ:さて、今日の内容はこちら、「桃太郎の生態について」です。

ナオ:ふーん桃太郎………桃太郎!?しかも生態って!どういうことだよ!?

ゴウ:桃太郎は、タロウ科の生き物としては、最も有名な生き物ですね。

ナオ:タロウ科って!初めて聞いたわそんな分類!

ゴウ:その桃太郎ですが、普通生き物は卵から生まれる「卵生」、もしくは母親の体から生まれる「胎生」であることは知っているでしょう。
    しかし、桃太郎は桃から生まれる、いわば「桃生」の生き物なのです。

ナオ:確かにそうだけど、「桃生」って言い方はどうよ!

ゴウ:さて、桃太郎はどうして桃から生まれるのでしょうか?それは、桃太郎の一生を見ていくと分かりますよ。では、詳しく見ていきましょう!

ナオ:うわ、すっごい気になるわ……

ゴウ:まず桃太郎は、春が来て暖かくなると、川の上流に桃を産み付けます。

ナオ:あれ産み付けてんの!?図が想像出来んわ桃産むって!…しかも相当大きいだろあの桃!

ゴウ:春、特に3月の始めは桃太郎の産桃シーズンです。そこから、3月3日は「桃の節句」と言われるんですね。

ナオ:いや、それは嘘だろ!他に由来あるよ絶対!

ゴウ:さて、その産み付けられた桃は、上流から下流に流れていきます。このとき、「どんぶらこ」という独特の音が鳴るのは有名だと思います。

ナオ:あ、あれ本当になるんだ!聞いてみたいわ。

ゴウ:しかし何故、「どんぶらこ」という音が鳴るのかですが、詳しくは分かっていません。
    数々の科学者の頭を悩ませており、この問題を解いた科学者が次のノーベル賞を獲得するだろう、とも言われています。

ナオ:そこまでの謎なのかよ!…てか「どんぶらこ」なんかよりももっと重要な研究あるだろ!そっちをやれよ科学者!

ゴウ:ただ現在は、生まれる前の桃太郎が寝言のように発している言葉ではないか、というのが有力な説とされています。

ナオ:…いや、それはないだろ!どう間違ったら口から「どんぶらこ」って言葉が出て来るんだよ!

ゴウ:こうして「どんぶらこ」と流れていくわけですが、その途中で川で洗濯しているおばあさんに拾ってもらいます。そうして桃太郎は誕生するのですね。

ナオ:ちゃんと話通りなんだここ。

ゴウ:そして誕生した桃太郎は、自らが生まれてきた桃を食べます。これは、外敵に自分の居場所を知られ、襲われないようにするためです。

ナオ:モンシロチョウの幼虫かよ!!そんな身に危険とかないだろ!

ゴウ:こうしないと、生まれたばかりの桃太郎は、同じタロウ科の金太郎に食べられてしまいますからね。

ナオ:外敵、金太郎なんだ!金太郎おっかねえな!

ゴウ:…これが桃太郎が誕生するプロセスなのですが、ここで大事なのは、桃太郎は桃から生まれる。そう、「桃」であるということです。
    ……考えてみてください。川上から大きな桃が流れてきたら………人間、つい拾ってしまうでしょう。

ナオ:いや、呆気に取られて拾うどころじゃないと思う。

ゴウ:そのような人間の性質を巧みに利用し、桃太郎は「桃生」へと進化を遂げました。

ナオ:それにしても、すごい方向に進化したな。

ゴウ:しかしここで問題が発生しました。…桃を見ても、人間すべてが拾うわけではないのです。

ナオ:そりゃそうだよ。

ゴウ:これは大問題です。人間が拾ってくれない場合、生まれてくるには、桃が腐るまで待つという方法しかありません。

ナオ:いや、自分から割って生まれること出来ないのかよ!一番自然な方法なのに!

ゴウ:しかしここからが自然のすごいところで、桃太郎は自然と解決法を見つけました。…ターゲットをおばあさんに絞ればいい、と。

ナオ:ターゲットて。なんかスーパーの商戦みたいだな。

ゴウ:進化を重ねるにつれ、桃を最も拾うのはおばあさんであることが分かったのでしょうね。確かに、おばあさんは桃が大好きですからね。

ナオ:そうとも限らないだろ。

ゴウ:それに老人、特におばあさんはせっかちですから、桃をより拾ってもらいやすいのですね。

ナオ:だからせっかちとも限らないだろ!なんなんだよその軽い偏見!

ゴウ:さあ、そして拾ってもらった桃太郎ですが、生まれるまでにはさらに試練があります。

ナオ:…まだあるのか。

ゴウ:桃を切ってもらうときに、桃太郎も一緒に切れてしまうのです。

ナオ:やっぱそういうことあるんだ!コントの中だけの話だと思ってたのに!

ゴウ:考えてもみてください。桃太郎は桃の中にぎっちりと詰まっている状態。…包丁が避けられるわけがない。

ナオ:確かにそうだけど……

ゴウ:昔はこれによって、死産率が90%以上あったとも言われています。

ナオ:それは多いな…

ゴウ:しかし、これにも桃太郎は進化の過程において、解決法を見つけ出しました。……スペアの桃太郎を用意したのです。

ナオ:いやスペアって!どういうことよ!

ゴウ:1匹でも多く生まれるために、包丁で切られる用の桃太郎を内蔵すればいい…桃太郎はそう、考えたのですね。

ナオ:桃太郎の誕生の裏に、命の犠牲があったのかよ!うわあ……

ゴウ:なので、ごく稀ですが、スペアの桃太郎が無事で、結果的に桃太郎が双子になる場合があるのです。

ナオ:双子の桃太郎って!どっちか桃次郎になるそうなもんだけど。

ゴウ:双子の桃太郎が出たときは、珍しいことなのでちょっと自慢できますね。

ナオ:その程度か!あれか、卵を割ったら黄身が双子だったぐらいの感覚か!

ゴウ:このように、天然の桃太郎はスペアで対応しているのですが、少しでも命の犠牲を防ぐため、品種改良された桃太郎もいます。

ナオ:いや、品種改良って植物みたいに!……ん、一応植物か…?

ゴウ:品種改良された桃太郎の場合、桃を大きくし十分にスペースを開けることで、桃太郎が切られるのを防ぐことに成功しています。
    …じゃがりこのパッケージが、中身より一回り大きいのと同じような感じですね。

ナオ:例えおかしいよ!なんでじゃがりこだよ!

ゴウ:この品種改良によって、桃太郎を無駄に死なせることがないため、桃太郎の工業的生産に使われています。

ナオ:いや、工業って!桃太郎を何に使うんだよ!

ゴウ:生産された桃太郎は、絵本に使われます。

ナオ:あれ本物が使ってあんの!?

ゴウ:現在は、天然モノの絵本が求められる時代ですからね。本物の桃太郎を贅沢に使った絵本がよく売れます。

ナオ:絵本に天然とかあるのかよ!?まず、本物をどう使うんだよ!

ゴウ:そして、100%桃太郎使用の絵本まで登場したのはニュースになりましたね。

ナオ:…いや100%って無理だろ!桃太郎の肌に文章書くんか!

ゴウ:さて…このように、様々な問題を解決し進化を遂げてきた桃太郎。しかし、現在、新たな問題があります。

ナオ:…桃太郎、問題だらけだな。

ゴウ:一番の問題は、川で洗濯をするおばあさんの減少です。

ナオ:そりゃそうだ!川で洗濯するおばあさんとか、天然記念物だもんな!

ゴウ:これにより、拾われることなく流されていく桃太郎が増加しています………これが、下流で大きな問題になっているのです。

ナオ:そうなんだ。

ゴウ:下流は桃で埋め尽くされ、水面が桃色に見える………これが、「桃潮」というものです。

ナオ:「赤潮」みたいなノリかよ!初めて聞いたわ!

ゴウ:ただ桃が大量に浮いているだけではありません……桃が、腐るのです。

ナオ:うわ、それはキツイな。

ゴウ:さらに桃に入っていた桃太郎も水没……肉の腐った臭いも充満するのです…

ナオ:地獄絵図だよもう!そんなのどこで起きてるんだよ!

ゴウ:最近では、利根川から流れてくる桃太郎による東京湾の桃潮被害が相次いでいます。

ナオ:初耳だわ!なに、東京湾、桃色に染まってるんか!

ゴウ:そのためお台場は今、桃の臭いで充満しています。

ナオ:お台場がそんな!

ゴウ:レインボーブリッジも今、ピーチブリッジになってしまいました。

ナオ:1色になった!!そんな橋、それこそ封鎖したいわ!

ゴウ:さらに、東京の地名も変化し、「赤羽」は「桃羽」に。

ナオ:桃当てはめただけじゃねえか!桃羽って、フラミンゴかよ!

ゴウ:さらに「青山」は「桃山」に。

ナオ:…その地名、京都にあるよ!安土桃山時代の桃山だよ!

ゴウ:また、これにより「青山テルマ」は「桃山テルマ」に改名を余儀なくされ……

ナオ:それは無理あんだろ!改名って!

ゴウ:“桃”山テルマということで、歌もエロティックな路線に変更するとのことです。

ナオ:そこまでしなくても!キレイな歌声なのにもったいない!

ゴウ:このような事態のため、政府は「桃潮防止法」を定めました。

ナオ:法律まで!すごい影響力だな!

ゴウ:法律を定めたことで、桃潮防止のために政府は、予算を出して金太郎の飼育に乗り出しました。

ナオ:外敵の金太郎に食わせるってことか!

ゴウ:しかし、金太郎の飼育には莫大な費用がかかります。なにしろ、金太郎は金から生まれるのですから。

ナオ:金太郎、金から生まれるの!?

ゴウ:この金を手に入れるのが大変で、政府はすでに国家予算を使い切りました。

ナオ:桃潮防止に金使いすぎだ!!ただでさえ赤字国家なのにアホか!

ゴウ:そこでいかに安価に桃太郎の数を減らすか……この問題を解決した科学者が、次のノーベル賞を獲得するだろうと言われています。

ナオ:またノーベル賞に関わるのか!桃太郎関連でこんなにノーベル賞獲られてもイヤだわ!

ゴウ:…このように、現在ではいろいろな問題にもなっている桃太郎。この問題を解決するためにも、ぜひ、川で桃を拾うことからはじめましょう!

ナオ:「川でごみ拾いしましょう!」みたいな感じか!

ゴウ:…高校講座生物、本日は以上です。

ナオ:ああ、全部聞いちゃったけど……なんだこの話、全然聞いたことないし………

ゴウ:明日は、同じタロウ科の滝廉太郎についてお話します。

ナオ:いや、滝廉太郎はオンリーワンだろうよ!無駄に気になるけど!

ゴウ:それではまた来週………








ナオ:……川に桃でも拾いに行こうかな。



 











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