2.炎天下、待ち合わせ




ゴウ:……よーっす。

ナオ:おお、やっと来たか。

ゴウ:………あれ、高山は?

ナオ:あー、あいつまだ来てない。

ゴウ:マジかよ、俺が最後だと思ったのに。じゃあ待つしかないなあ……

ナオ:だな。

ゴウ:ふう………。それにしても、あっついなぁ……

ナオ:確かに…こんな猛暑の中、街中で待ち合わせって。キツイな……

ゴウ:だよなあ………かといって、建物の中で待っとくわけにもいかないしな…

ナオ:あいつには確実に会わないといけないからな、仕方ないわ。

ゴウ:だよなあ………お前、いつぐらいからここにいる?

ナオ:10分前ぐらいだけど…それでもこの暑さはしんどいわ、うん……

ゴウ:ああ………着てくる服、失敗したわあ……こんな厚手で黒い服って………

ナオ:確かにお前、スーツだもんな。暑そうだな……

ゴウ:だろ?上だけでも脱げたいけど、でもな……

ナオ:ああそうか、そうだよなあ……

ゴウ:スーツ脱いだらその下、何も着てないもんなあ……

ナオ:……何て?

ゴウ:いや、下に何も着てないからさ……

ゴウ:…お前、上スーツだけ!?シャツとか着てないの?

ゴウ:うん。

ナオ:…初めて見たわそんなやつ!裸にスーツって!

ゴウ:いや、暑いと思ってだな…

ナオ:だからってなあ………

ゴウ:まあ、脱ぐのは無理か…この人ごみの中だし、上半身裸はなあ……

ナオ:そうだよ、街中で上半身裸って、ちょっと自由で変な人だよ。

ゴウ:………よし、ボタンだけ外すか。

ナオ:…いや余計おかしいよ!はだけさせるって!変な人度合いが増すよ!

ゴウ:そうだな…半端はダメだ。0か1じゃないと……

ナオ:0もアウトだよ。

ゴウ:………ああ、しかし暑い…

ナオ:……まずさ、上スーツだけって、汗吸わないだろ。シャツとか着て、汗を吸った方が涼しいんじゃないのか。

ゴウ:そ、そうなのか!

ナオ:普通、そう聞くけど。

ゴウ:そうか………一応な、荷物の中にシャツ入ってるんだよ。

ナオ:シャツ持ち運んでんのかお前!なら着てこいよ…

ゴウ:……ここで着た方がいいのかなあ、シャツ………

ナオ:そういう発想になるか。

ゴウ:…でも、着替えるときに1回、裸になるからなあ……

ナオ:……少なくとも、ずっと脱いでいるよりはマシだが。

ゴウ:…さっと脱いで、さっと着たらそれで終わりか………うん…

ナオ:………いや、するつもりかよ!

ゴウ:…いや、でもこういう場合、脱いだ後あせってなかなか服が着れなかったりするんだよなあ………

ナオ:確かに、なりがちだけどさ…

ゴウ:そうして着れないまま悪戦苦闘してたら、「街中で上半身裸でくねくねしてる人」になるなあ………

ナオ:…江頭2:50やん!上半身裸でくねくねしてる人って、江頭2:50やん!

ゴウ:エガちゃんにはなりたくない………

ナオ:…いや、イコール江頭2:50ではないけれども。

ゴウ:………そうか、それならエガちゃんに横でくねくねしてもらえばいいんだ!そしたら、こっちがくねくねしてても視線はエガちゃんに……

ナオ:よけい視線集まるよ!街中で上半身裸でくねくねしてる人が2人だぞ!誰でもそっち見るわ!

ゴウ:なら、お互い逆方向にくねくねすれば、打ち消しあって……

ナオ:ならないよ!気持ち悪いEXILEみたいになるよ!

ゴウ:そうか………

ナオ:そもそも、江頭2:50に来てもらうこと自体、無理だよ…

ゴウ:……そうだ、くねくねするぐらいなら、いっそ上半身裸で堂々としてれば!

ナオ:…戻っちゃったー。戻っちゃったよ上半身裸に。ダメだよ、それでも十分視線が集まるよ!

ゴウ:俺の体に、人々の視線が………ふふふ……

ナオ:…なんか目覚めた!変な部分が目覚めちゃってる!

ゴウ:人間ならな………裸を見られたいという欲求は、自然な欲求なんだぜ……

ナオ:そうでもねえよ!それが普遍だと思うなよ!

ゴウ:マズローの欲求階層説で、生理的欲求のさらに下の欲求とされていたはず……

ナオ:されてねえよ!そんなんが欲求の根源なら人間やめるよ!

ゴウ:…うおおお!なんか湧き上がってきた!……よし、ズボンも脱ぐか!

ナオ:それは!それはさすがに…

ゴウ:あ、でもその下、何も履いてないな………

ナオ:…って!お前、下履いてないの!?ノーパンかよ!?

ゴウ:涼しいかと思ってだな……

ナオ:なんというか…下はさすがにだな!ごわごわするだろ、まず。

ゴウ:快感の方が勝った。

ナオ:……ああ。こいつ、ヘンタイだったのか……

ゴウ:よし!俺は脱ぐぞ!オープン・トゥ・ザ・フューチャー!!

ナオ:意味わかんねえよオイ!……お前、街中で服脱いだら警察来るぞ!

ゴウ:…け、警察!?それは、それだけは……!

ナオ:……警察の力、恐るべし。

ゴウ:いや、でも脱ぎたい………でも警察に捕まるのは……

ナオ:…なるほど、これが葛藤か。

ゴウ:……そうだ、こう、誰も気付かないように服が脱げれば………

ナオ:ああ、また発想が変な方向に…

ゴウ:…そう、自然に服が脱げればいい!……自然に服が脱ぎたい!ナチュラル!ナチュラル脱衣!

ナオ:急に叫ぶなよ!なんだよナチュラル脱衣って!

ゴウ:…そうか、これは漫画でよくあるアレだ!服から糸が出ていてそれを引っ張ったら、服がほどけてワーオ!な展開しかないな!

ナオ:そんなんあるけども!現実においては十二分に不自然だよ!

ゴウ:そうか不自然か……なら、うーん………

ナオ:……脱ぐのをやめる、って選択肢はないのかよ…

ゴウ:………よし分かったぞ!ちょっと待ってろ!(ダッ)

ナオ:あっ、どっかに走っていった!なんなんだあいつ……





(しばらくして)

ゴウ:たっだいまー。

ナオ:あっ戻ってきた!なにしてたんだよ今まで!

ゴウ:聞いて驚くなよ………なんとな、スーツを改造してきた!

ナオ:………は?

ゴウ:だからー、自然に服が脱げるように、スーツを改造してきんだって!すげえだろ!

ナオ:……驚きが1周して言葉もねえ!なにアホなことに時間費やしてんだよ!…まず、どこで改造してきたんだよ!

ゴウ:いや、家で。

ナオ:家帰ったんなら、涼しい格好に着替えればよかっただろ!本末転倒とはこのことか!!

ゴウ:でもな、すげえから。見てろよ……

ナオ:………いや、なんも変わってないんだけど。

ゴウ:だろ?変わってないように見えるだろ!?

ナオ:うん……

ゴウ:実はな……1秒に1本ずつ、繊維が抜け落ちるように出来てるんだぜ!

ナオ:…なんだその機能!逆に仕組みが知りたいわ!

ゴウ:これを着ているといつの間にか、服の繊維がなくなっていき………最後にはスッポンポン!ワーオ!

ナオ:ワーオじゃねえよ!まずな、最終的に全裸になる時点でアウトだって!

ゴウ:よし、早く全裸に!早く………

ナオ:………おい。

ゴウ:早く全裸………As soon as 全裸……

ナオ:文法的におかしいよそれ。………いやお前な、今日の目的、覚えてるか?

ゴウ:目的?いかに自然に服を脱ぐか……

ナオ:そうじゃねえよ!高山と待ち合わせだっただろ!

ゴウ:………ああ、そういえばそうだったな。

ナオ:忘れてたのか!高山に会って、このブツを渡し、そして金を受け取るっていう、そういう大事な用だっただろ!

ゴウ:……確かにそうだった…

ナオ:だろ?なら………

ゴウ:…でもな。今の俺にとっては、全裸になる方が大事だ!!

ナオ:……ああもうこいつダメだ!ヘンタイが止まらねえ!

ゴウ:さあ早く全裸………全裸Coming soon………………ああもう待てねえ!!(ズバーン)

ナオ:うわっ服が脱げた!なにしてんだよお前!

ゴウ:こういうこともあるだろうと思って、糸を引けばすぐ服が脱げるようにもしておいたんだ!

ナオ:ならさっきの機能、意味ねえじゃねえか!お前、ホントに街中で全裸になりやがって………

(ピーポーピーポー)

ゴウ:なっ、この音は!

ナオ:……ホントに警察来たじゃねえか!どうすんだよ!

ゴウ:………ははは!もうどうにでもなるがいい!

ナオ:何言ってんだ!全裸で仁王立ちになってもカッコよくねえよ!

(バタン!)

ナオ:うわ、警察官がこっちに向かってきたよ……こいつ捕まるよ…

ゴウ:……え?あ、いやあの、これはですね、不慮の事故で服が………あの、糸が出てて脱げちゃって……

ナオ:なんだかんだで言い訳してる!

ゴウ:………あ、この荷物?……ああ、これは仲間に渡す麻薬………

ナオ:……………あっ!

ゴウ:……しまったあぁぁー!脱がなくても警察に捕まるのかあぁぁぁ!!



 










<act.3>






 




 

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