偽りPercussion

コント/ジメジメ砂漠で脱いだり暴れたり



(霜山を乗せたチーターが、夕方前のジャングルを走り抜ける)
 


霜山:うわー、凄い。もうサハラ砂漠が見えるよ。やっぱりチーターって速いんだね。
 
チーター:ガウ!ガウッ!ガギャッスッ!!
 
霜山:ああ、そうだったね、君は昔、陸上部だったもんね。
 



(サハラ砂漠でチーターが止まり、霜山が降りて寝転ぶ)
 


霜山:はー、まさか本当に日が沈む前に着けるとは思わなかったなー。
 
マキ:(チーターのキグルミを脱ぐ)うん、かなり頑張って走ったよ!ハァ・・・疲れた・・・。
 
霜山:なんかゴメンね、俺だけ楽しちゃって。
 
マキ:ううん、全然大丈夫だよ!それにサハラ砂漠に行きたいって言ったの私の方だし。付き合ってくれただけで霜山にはありがとうだよ。
 
霜山:うん、そうか。それにしてもさ、マキはどうして急にサハラ砂漠に行きたいって言い出したの?
 
マキ:いや、まあ、なんて言うか、この・・・急にさ、何にも無いだだっ広い場所っていうのが見たくなったんだよ。
 
霜山:何にも無い場所?
 
マキ:そう、ビルや生き物やコンクリやゴミが敷き詰められた世界に住んでるとさ、なんだか何でもありすぎて怖くなっちゃうんだよね、
 
   だからここには何もありませんって場所を見るとさ、なんだかさ、少し新鮮な空気を味わえるというか・・・癒された気分にならないかな?
 
霜山:うーん、そうかな?俺にはちょっとよく分からないな・・・。
 
マキ:そ、そう・・・ッハハ!おかしいよね、私・・・。
 
霜山:まあ、俺が癒されるモノと言えばね・・・
 
マキ:霜山はコレでしょ(モアイ像のキグルミを着る)
 
霜山:そうそう、よく分かってるじゃん。
 
モアイ:モアイーモアモアモアーイ。
 
霜山:ハハ、そうだよね、もうマキとは6年間も恋人同士だからね。
 
モアイ:モアイーモアイーモアモア?
 
霜山:うーん、子供の頃からモアイは好きだったんだけどね、本格的に好きになり始めたのはモアイのレントゲン写真を見せてもらったときからかな。もうアレは本当に衝撃的だったよ、「まさかモアイに肋骨があったなんて!」ってさ。
 
モアイ:モアイー!アイアイアモ!
 
霜山:そうだね、お互いに変な趣味を持ってるよね。でも、モアイを学ぼうと入った大学でマキと出会えたんだから、それは本当に自分の趣味に感謝だよ。
 
モアイ:モア・・・モアイモ!ゴロゴロゴロ(砂漠を転がり始める)
 
霜山:・・・でも、砂漠が好きっていうのなら、ちょっと分かるなー。
 
モアイ:ゴロゴロゴロモアモア?
 
霜山:こんだけ広い景色を眺めてるとさ、自分も地球の一部なんだって実感が沸いてくるよ。砂漠が好きって、なんだかステキだね。
 
モアイ:!!モア!ゴロゴロゴロ(霜山に向かって転がる)
 
霜山:うわ、ちょ、ちょっとマキ!落ち着いて!止まって!
 

(サハラ砂漠で転がるモアイ像に追い掛け回されてる霜山)
 

霜山:ハァハァ・・・もう、嬉しかったのは分かるから少し落ち着いてよ、15メートルの巨像から逃げ回っちゃったよ。
 
マキ:(モアイのキグルミを脱ぐ)ゴメン・・・なんかちょっとその・・・テンション上がっちゃった。ホントゴメン!
 
霜山:ああでも・・・転がるモアイ像はちょっと癒されたな・・・マキ、ムービー撮るから今のもう一回やって。
 
マキ:無理だよ!疲れちゃうよ!
 
霜山:えー、残念。けどさ、いくらなんでもずっと砂漠を見てるだけじゃ、さすがにちょっと飽きてきちゃうと思うね・・・。
 
マキ:そ、そうだね・・・じゃあ、なんかしようか!クイズとかはどうかな!?
 
   問題です!この中で一ヶ所だけ間違いがあります!さて、それはどこでしょうか!?(両手を広げる)
 
霜山:いや、サハラ砂漠まで来てクイズっていうのもな・・・。
 
マキ:あ、うん、そ、そうだね・・・。
 

(少し沈黙が流れる)
 


霜山:それにしてもさ・・・。
 
マキ:えっ!?なになに霜山。
 
霜山:まさか下北沢からサハラ砂漠まで電車も使わないで行けるとは思わなかったよ。これならウチの会社から自転車で行ける距離かな・・・。
 
マキ:うん、全然余裕で行ける距離だよ!あっ、じゃあさ今度会社のみんなも誘ってピクニックしない?
 
   商談も一段落した所だし、橋本先輩とかも来てくれたらきっと楽しいと思うよ!私、霜山と橋本先輩のモアイあるある1000連発また見てみたいな!
 
霜山:・・・橋本先輩は、三週間前クビになっただろ・・・。
 
マキ:あっ・・・う、うん。
 
霜山:・・・呼べるわけがないだろ、嫌味としか思われないよ。
 
マキ:ゴ・・・ゴメン・・・。(ネコジャラシのキグルミを着る)
 
霜山:いや、マキがそんな申し訳無さそうにしなくていいよ。悪いのはいっつもクソみてえな指令しか出さない上層部だ。
 
ネコジャラシ:ネコジャラ・・・ネコネコ?
 
霜山:ああそうだよ、今回の商談だって、責任は全部上層部にあるのに、橋本先輩一人に全部押し付けやがって・・・アイツらみんな頭腐ってんじゃねえのか!!
 
ネコジャラシ:ネコ・・・ネコジャラジャ・・・。
 
霜山:だいたい、六本木体温計ランドを買収しろって言ったのはアイツらだろ!!どんな強引な手を使ってもって!!それなのにヤバくなったら当事者の責任って・・・なんであんなゴミみたいな人間が上層部やってんだよ!!
 
ネコジャラシ:ネコジャラン・・・ネッコジャラシ。
 
霜山:ああ・・・確かに体温計を割って水銀飲もうとした橋本先輩の脅し方が完全に悪くないとは言えないけどよ、橋本先輩をそう動かしたのは何もかも上層部のヤツらだろうが!!あいつらが一切責任取らないなんて、こんな酷すぎる話があるか!?
 
ネコジャラシ:ネココ・・・ネココ・・・ジャラ・・・。
 
霜山:それで何で15年間会社に務めた橋本先輩がそんな理由でクビにされるっていうのに、課長も他のヤツらも何も言わないんだよ!!アイツらもみんな上層部の犬で満足してるクソ野郎なのかよ!!
 
   本当に世の中クソなヤツらばっかりだ!!クソクソクソクソクソクソクソクソみてえな人間ばっかかよこの世界はよおっ!!チックショオッ!!!!
 
マキ:(ネコジャラシのキグルミを脱ぐ)そんな悲しいこと言わないでよ霜山っ!!
 
霜山:・・・マキ・・・。
 
マキ:わっ、私が・・・私がいるんじゃんか・・・だ、だからさ・・・(泣き出す)
 
霜山:・・・・・・ごめんねマキ、君にはさっきから項垂らせてばかりだ・・・。
 
マキ:先輩が・・・クビになったことは、私だって悲しいよ!悲しいし腹立たしいよ!!でもさあ・・・それで霜山がいつまでもそんなことを言ったって、どうにもならないじゃん!!
 
   仕方ないことじゃん!どうしようもないことじゃん!だから怖がる霜山の気持ちも理解できるよ!けど・・・だけど・・!!
 
霜山:仕方ない・・・どうにもならない・・・怖い・・・・?
 
マキ:だからさ、霜山は少し冷静になってもっと考えてみるべきだよ!サハラ砂漠に来たホントの理由はね、霜山にゆっくり考えられる場所を与えたかったんだよ!
 
霜山:ゆっくり考えるべき・・・俺が・・・?
 
マキ:ねえ霜山、とりあえずは笑い合ってみようよ!気が付いてないと思うけど、最近の霜山全然笑ってないよ・・・ねえ、笑おう!昔みたいにさ!(アメリカンジョークのキグルミを着る)
 
霜山:ああそうか・・・違和感あるなと思ったら・・・笑ってなかったのか、俺・・・ハハ、全部あの会社のせいだな・・・。
 
アメリカンジョーク:ヘーイミスターシモヤーマ!!聞いてくれよ最近ボクのフレンズのロビンってヤツがすっごく面白い事を彼女のジュリアーに言ったんだ!!
 
霜山:他人の悪口も毎日言うようになったねえ・・・ハハ、確かにね。学生の頃は、人があんなに醜い生き物だなんて思いもしなかったもん。
 
アメリカンジョーク:ロビンはジュリアーとデートの約束をしてたと言うのに、何をとち狂ったのかお昼にチャイナタウンでニンニクギョーザをバクバク食べちまったのさ!!
 
霜山:あー・・・懐かしいね、学生時代の俺はそんな純粋無垢な性格だったんだね。今とは全くの別人だな・・・。
 
アメリカンジョーク:当然ジュリアーはそのロビンの口の臭さに大ブーング!その臭さで一瞬キリスト様を見ちまったと彼女は後に言ったそうだ!
 
霜山:そうだね・・・会社に務めてからの6年間で、俺はもう、君が知ってる俺ではなくなった・・・。
 
アメリカンジョーク:ジュリアーは大激怒しながらロビンに言ったのさ。「君は何を考えてそんな臭い口をして私に会いに来たんだ!」って。するとロビンは何て答えたと思う?
 
霜山:・・・何が言いたいんだ君は。俺に、会社をやめろと言いたいのか。
 
アメリカンジョーク:「俺の口が臭いのは、そんな口が臭くなるような料理を出した、店側の責任だろ」だってさ!HAHAHAHAHA!
 
霜山:それがすることができないのは、君も重々理解しているだろう。こんな不況の中で、俺みたいな才能のない人間を雇ってくれる会社なんて無いことくらいはさ。
 
アメリカンジョーク:だってさ!自分の口の臭さをさ!他人のせいにするんだよ!それでジュリアーも納得しちゃうしで!ああおかしい!HAHAHAHAHA!!
 
霜山:・・・フザケルナよ。どうしていつも君は、そんな軽々とした喋り方で、俺の生き方を決めつけようとするんだよ。
 
マキ:(アメリカンジョークのキグルミを脱ぐ)・・・えっ?
 
霜山:俺だってさあっ!!考えてんだよっ!!毎日毎日反吐が出るくらいさああ!!でもどうやったら、俺が幸せに生きれるのかなんてことは、分からねえんだよお!!
 
   俺の苦しみも知らないで転職すればとかもっと笑えとか勝手なこと言うんじゃねえよ!!自分の理想を俺に押し付けるんじゃねえよ!!俺にすら分からないことをお前がどうにかできる訳がねえだろ!!
 
マキ:ご・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい霜山・・・。
 
霜山:クソ!クソ!クッソオオ!!マキ、アレのキグルミ着ろ!!
 
マキ:ええ!それは駄目だよ霜山!!せっかく頑張ってやめれるようになったのに!!
 
霜山:いいから早く着ろよっ!!張り倒すぞ!俺の怒りを収めるためにも、早く着ろやっ!!
 
マキ:・・・・・・。・・・・・・。(無言でパチンコのキグルミを着る)
 

(サハラ砂漠の真ん中で、パチンコ台に座る霜山)
 

霜山:ハァ・・・ハァ・・・・(興奮しながらパチンコのハンドルを握る)
 
パチンコ:「パチンコ海鞘物語!スタート!」(盤中を銀球が弾ける)
 
霜山:そうだよ・・・俺は会社の苦しみから逃れるために、パチンコを始めたんだ・・・。学生時代は、絶対にやってはいけないものだと確信していたのに・・・。
 
   タバコだって吸うようになったし、覚せい剤紛いの物だって手に入れられる限り摂取した。どんどん昔の俺が一番なりたくない人間になっていってしまったんだ・・・。
 
パチンコ:「グイングイングイングイングイン!!リーチ!リーチ!」(スロットが回る)
 
霜山:橋本先輩はいい人だった・・・こんなダメ人間になっていく俺の悩みを、ちゃんと聞いてくれた。それに・・・共通の趣味の話ができる友人が出来たことが、嬉しかった!!
 
   朝から晩までモアイ音楽フェスの話をしながら仕事をするだけで、俺は救われた気になっていたんだ!!
 
   そんないい人が、あんな理不尽な首の切り方されちまってよ!!落ち着いていられる程俺は甘い人間じゃねえんだよっ!!
 
パチンコ:(スロットが7・7・6で止まる)(スロットが回る)(スロットが7・7・5で止まる)「グイングイングイングイングイン!!リーチ!リーチ!」
 
霜山:フザケルナよ!!この気持ちを、たった一年ウチにバイトに来ただけのお前なんかに分かる訳ねえだろ!!
 
パチンコ:(スロットが回る)(スロットが7・7・4で止まる)(スロットが回る)(スロットが7・6・6で止まる)「グイングイングイングイングイン!!リーチ!リーチ!」
 
霜山:何が言いたいんだよお前は!何が言いたいんだよお前はよおっ!!(台を全力で叩く)
 
パチンコ:「ビービービービービー 係り員をお待ちください 係り員をお待ちください」
 
霜山:おい!なんとか言えよ大今マキっ!!なんなんだよチクショウッ!!(台を叩き続ける)
 
パチンコ:「ビービービービービー 係り員をお待ちください 係り員をお待ちください」(銀球がぽろぽろ溢れ落ちる)
 
霜山:クソッ・・・クソッ・・・クソッ・・・(泣き崩れたあまり銀球の箱を倒す)
 
マキ:(パチンコのキグルミを脱ぐ)・・・霜山・・・。
 
霜山:俺・・・これからどうしていくべきなんだろうな・・・・。
 
マキ:・・・・・・・・・・・・・・・分からない・・・・・・でも、霜山が苦しんでる姿を、私は見たくない・・・。
 
霜山:ただ誰も傷付けないで生きていきたいってんじゃダメなのかよ・・・何か大きな理想を持っていなくちゃ、ダメなのかよ・・・。
 
マキ:・・・・・・ねえ、さっきも言ったけど、霜山には、何か大きな理想は無いの?ずっとこのままで、霜山は満足なの!?
 
霜山:そんなもの・・・子供の頃にしか持ち合わせたことはないよ・・・。生きて、絶望して・・・愚痴をこぼすだけで今は精一杯だよ。
 
マキ:子供の頃は・・・どんな理想を持ってたの?
 
霜山:・・・エンジニアに・・・なりたかった。人工衛星作って、自分で打ち上げて、それで世界中の様子を観察することが夢だったんだ。
 
マキ:へー!素敵な夢じゃん!子供の頃にそんな大きな夢を見れるなんて凄いよ!私なんて子供の頃の夢はぬか漬けだよぬか漬け。それも当時流行ってた戦隊アニメに影響されてさ。
 
霜山:幼い頃の話だよ・・・まさか今から、エンジニアを目指せと言うんじゃないだろうな・・・。
 
マキ:さすがにそこまでは言えないけど・・・でもさ、大きな理想を持ってた時期があったんじゃん!その時の気持ちを思い出そうよ!
 
   そしたら絶望しっぱなしの人生じゃなくて、理想を持って、前向きに生きられる人生になれると思うよ!(人工衛星のキグルミを着る)
 
霜山:・・・なんでそう軽々しく言えるのかな・・・俺は今、大学時代の事すらロクに思い出せないんだよ・・・。
 
人工衛星:キューン、キューン、キュキュキュ、ピッ、キュキュイーン。
 
霜山:いつだって君は本当に無責任な事を言うな・・・そういう所が嫌いなんだよ。もうほっといてくれよ・・・また殴られたくないだろ。
 
人工衛星:ピコーン、ピットピッ、キュキュキューン。
 
霜山:なんでたった6年しか付き合っていないのに、俺のことを全部分かった気でいるんだよ・・・。
 
人工衛星:パッ、パッ、ピッ、キュキュン、ツオーン、ッツ。
 
霜山:ああいいよ、そんなに思い出させたいんなら、飛んでみろよ。子供の頃の俺が夢見た風景を取り戻すためにもなあ。
 
人工衛星:・・・スリー ツー ワン ゼロ ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
 

(遥か上空に打ち上がる人工衛星を、サハラ砂漠の真ん中で眺めてる霜山)
 

霜山:・・・・・・本当に飛びやがるバカがいるかっ!!
 
人工衛星:モウスグ タイキケン トッパ シマス ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
 
霜山:やめろよ!やめろよっ!!どうせ宇宙にまでは行けないんだ!どうせ墜落するだけなんだよ!なのになんでわざわざ行こうとするんだよ!馬鹿じゃないのか!!
 
人工衛星:タイキケンン トッパ シmmmmmmmmmmaaaasissishsidisiio7649328701e09uor03099jpoew-wドgァqッt!!!!!!(空中で爆破する)
 
霜山:ほら見ろ!ほら見ろ!ほら見ろよ!!才能ねえヤツが理想なんか見たって無駄なんだよ!そんなこと誰だって気づくものだろ!!何でそれが分かんねえんだよ!!!
 
人工衛星:(遠くの方まで落ちていく)
 
霜山:な・・・何やってんだよ!早く戻ってこいよ!!危ないことすんなよ!!
 





(遥か彼方で墜落する人工衛星)
 



(燃え上がるどこかの街)
 



(それと同時に沈んでいく夕日)
 





(それらをただ眺める霜山)
 


霜山:夕日が・・・燃えていやがる・・・!
 






   ・・・あれ・・・何でだ・・・何で俺、今泣いているんだ・・・?
 

   俺は・・・この夕日を、こんな激しく燃える夕日を、過去にも見たことがあるのか・・・・!?
 





10歳の霜山:俺はいつかなあ!あの夕日に向かって人工衛星を打ち上げて!世界中の女の生着替えを盗撮するんだ!!
 






15歳の霜山:俺はいつかなあ!あの夕日に向かって人工衛星を打ち上げて!世界中のモアイ達の生着替えを盗撮するんだ!!
 






18歳の霜山:私はいつかですねえ!あの夕日が見えなくなるくらいに!日本中をモアイで埋め尽くす計画を実行するつもりなんですよ!!HAHAHAHAHA!
 






20歳の霜山:僕はですね、いつかあの夕日と共に、世界中の人みんながモアイと一緒に踊りだす、そんな社会を作りたいんですよね。
 
       生憎、僕が就職する会社では、そういったプログラムは実行できないのですが・・・
 
       なぜか、僕にはいつか必ず、その夢を実現できるような、そんな気がするんですよ!分かりますよね、マキさん。
 





(目が痛むほどの夕日を前にひざまずく霜山)
 


霜山:そうだった・・・思い出したよ。俺が将来の夢を語る時には、いつも後ろで夕日が輝いていたんだ・・・!!
 

   それも、全く同じ夕日のハズなのに、なぜだかいつもより何倍も燃え上がって見えてたんだ・・・!!
 


   あの時々に見た夕日は・・・俺が、夢や理想を、はち切れるばかりに持ち合わせていたから!あれだけ輝かしく見えていたのか・・・!!
 



(燃え尽きて塵になっていくどこかの街と人工衛星。それでもさんさんと輝き続ける夕日。)
 



霜山:そうか・・・これが・・・今この感動こそが!!気持ちなのか・・・夢や理想を持った時の、気持ちなのかっ!!!
 
   これが、これがそうだったのか!!これが、俺が6年間も、見失っていたものだったのかっ!!
 


マキ:(塵のキグルミを脱ぐ)思い出してくれたんだね・・・霜山・・・!!
 
霜山:マキ・・・もしかしてお前は、この夕日を見せるために、俺をサハラ砂漠に連れてきたのか?
 
マキ:うん、一番の目的はまさにそれ。ここなら何にも邪魔されず、綺麗な夕日を見せてあげられると思ったんだ。
 
   ・・・あの時、私に夢を語ってくれた霜山は、本当にカッコ良かった。ずうっと、この人のそばに居たいって本気で思えるくらい。
 
   だから、あの時に霜山が見た燃え上がるような夕日を見せれば、あの日の輝いてたあなたを思い出してくれるんじゃないかって!何の確証もないけど思ったんだ!
 
霜山:マキ・・・。
 
マキ:ねえ!あの日の感覚を霜山は思い出せたんでしょ!だったら今の霜山に、満足してる訳がないよねっ!!
 
   大好きな先輩がいなくなることが悲しいってことや、気に入らない人たちにこき使われてるのは苦しいってことは、私にもよく理解ができるよ!!
 
   だけど、だからって、霜山がどんどんと、あの時とは別の人みたいになっていくのは、私には耐えられないんだよ!!
 
   だから霜山、一回立ち止まって考えてみようよ!!今の霜山は、ただ闇雲に走ってるだけだよ!!
 
霜山:マキ・・・そうだね・・・そうだね・・・(笑いながら涙をこぼす)
 
マキ:霜山・・・!!笑った・・・!!
 
霜山:俺は・・・いや、僕は、怖がっていたんだ。自分勝手に絶望して、怯えていて、僕には何一つとりえがないと諦めていたんだ!!自分の進む足を止めたのは、他でもない、自分自身だったんだ!!
 
マキ:霜山・・・それじゃあ!!
 
霜山:うん、もう少し考えてみるよ。あの日の夢や理想で胸がいっぱいだった頃の自分を思い出したら、なんだか目の前の道が明るくなってきたんだ!!
 
   暗かったものは、全部君が殺してくれた・・・ありがとう、本当にありがとう、マキ。
 
マキ:ハハっ!いいってお礼なんか!!私は霜山がまた笑ってくれただけで、もう本当に大満足なんだから!!こちらこそありがとうだよ!
 
霜山:うん・・・ごめんね、マキ。
 
マキ:って!だからってなんで謝るのよ!別に霜山は謝ることはしてない・・・(霜山に抱きつかれる)
 
霜山:・・・・・・・・・。
 
マキ:えっ!ちょ・・・ちょっと、な、なになになに霜山!?
 

(サハラ砂漠の真ん中でマキを抱きしめる霜山)
 

マキ:えっ、いや、ちょっと!い、いきなりなんなのさ!ここここんな所で!そ、それに私ホラ、墜落して燃え上がった後で、あ、汗臭いし!!
 
霜山:そんなの気にしないよ。ありがとう・・・ごめんね、マキ。
 
   君はこんなにも、霜山寛治の事を思って、頑張ってくれたんだね・・・。それに僕は今になってようやく気がついて・・・本当にごめんね。・・・たくさん、傷つけちゃったね。
 
マキ:し、霜山・・・いや、いいって、大丈夫だよ。そこまで謝らなくて・・・。
 
霜山:理想で胸がいっぱいだった頃の僕を思い出させてくれたのは、全部、君のおかげだよ・・・本当にありがとう。
 
   ありがとう、愛してるよ、マキ。
 
マキ:ししし霜山!えっ、ちょっと、待ってゴメン!タンマ!(超絶美女のキグルミを手探りで着ようとする)
 
霜山:もういいんだそんなことは!!・・・しなくていいよそんなことは。
 
   君はいつだって僕のことを思って、自分を殺してまで僕の事に気を使ってくれたのだろう!
 
   もう何も演じる必要はないよ!これからは、何も着飾らない君と、一緒にいたいんだ・・・!!
 
マキ:・・・なんだろう、霜山・・・なんか・・・すっっごく嬉しい!!(霜山に抱きつく)
 
霜山:言ってごらん・・・マキ、君がしたいものは、何だ?
 
マキ:で、でも、私は霜山がまた笑ってくれたらそれで満足なワケで・・・他には何も望んでいなかったワケで・・・
 
   あっ、でも、霜山が毎年行ってるモアイ音楽フェスに、一緒に行ってみたいなーってのは少し思ってて・・・(もじもじしながら答える)
 
霜山:本当に、君の望みはそれだけなの?
 
マキ:・・・・・・(小声で)結婚・・・したい。
 
霜山:・・・・・・・・・!!
 
マキ:・・・・・・・・・あっ・・・いや・・・。
 
霜山:・・・・・・・・・うん、いいよ。
 
マキ:っ!!!ほ、本当にっ!?
 
霜山:うん、大好きだよ、マキ。(笑いながら強く抱きしめる)
 
マキ:・・・・・・うん、私も、霜山、大好き・・・。(顔を真っ赤にして霜山に抱きつく)
 
霜山:・・・・・・しようね。結婚。
 
マキ:・・・・・・うん。
 








霜山:でも、その前に。
 
マキ:・・・?
 
霜山:(マキのキグルミを脱がせる、するとそこには何もない)
 

   ・・・もっと深く・・・知らないとなあ・・・。
 













マキ:(何もないキグルミを脱いで霜山のキグルミを脱がす、するとそこには何もない)
 

   もっと深く・・・知らないとなあ・・・。
 





























橋本:(サハラ砂漠のキグルミを脱ぐ)
 

   
   仕事・・・見つけないとなあ・・・。
 



(下北沢の繁華街を歩き出す橋本、しかしその途中で霜山とマキらしきカップルとすれ違い、思わず俯いてしまう)
 

霜山:いやー最高だったねモアイ音楽フェスティバル!!もう盛り上がりすぎて喉が痛いよ!!
 
マキ:うん、凄かったね!私思わずモアイのキグルミまた買っちゃったよ!うん・・・それにしてもさ、霜山ってやっぱり会社やめてからすっごく明るくなったよね。
 
霜山:そうだね、これもみんなあの夕日を見せてくれたマキのおかげだよ!まあその分無職になっちゃったけどね。ハハ、今の僕、完全にヒモ状態だよ。
 
マキ:いやいや、それを決心したのは霜山でしょ。それに、霜山はもうすぐ学者の資格が取れそうなんだから・・・あっ。
 
霜山:えっ?・・・あっ、ど、どうもです。(軽く頭を下げて愛想笑い)
 
橋本:(無言で頷く)
 
マキ:・・・ビックリしたー。あれって橋本先輩でしょ。例の六本木体温計ランドの買収の時、水銀飲んで脅したせいでクビになったっていう。さすがの私でもそれ聞いた時はドン引きしたわー。
 
霜山:ああ、それにあの人仕事中でも空気読まずに、俺にモアイの話ばかりしてくるから正直苦手だったんだよなー。だからって無視するとすぐに怒るし、クビになったって聞いた時は少し清々したな。
 
マキ:そうか・・・あっ、そんな事より結婚式場の話なんだけどさ、
 
霜山:あっ、というか霜山禁止って言ってるじゃん。もー、マキも霜山になるんだよ。
 
マキ:ああゴメン!私また無意識に呼んでた!?えっと・・・寛治?
 
(笑いながら橋本を通りすぎてく霜山とマキ)
 


橋本:・・・・・・・・・社会では、人付き合いが大切ですと・・・。
 


39行目のクイズの答え:二人は橋本先輩のことがあまり好きではなかった。(むしろ嫌ってた)
 


橋本:・・・(霜山に向かってモアイTシャツをチラ見せするが、なんだが惨めになってきたのですぐにビルの影に隠れる)
 

   ああ・・・誰かと五十年くらい砂漠で暮らしてえな・・・(サハラ砂漠のキグルミを着る)

 

〜採点結果〜

最高 最低 標準偏差 お気に入り 採点人数 平均
88 18 22.73
★★★★
6名 59.50



〜詳細〜


★=お気に入り
100  
   
   
90  
  88★(FAN)
   
80  
   
   
70 70★(井島)・70★(ジンガー)
  68(鋳☆いんがむ)
   
60  
   
   
50  
   
  43(きょくにゃん)
40  
   
   
30  
   
   
20  
  18★(槍沢 雑)
   
10  
   
   
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