第二科学部

コント/ダブルデート



(増田舞台センター板付き)
増田:(腕組みをし、腕時計を見たりあたりをうかがっている)
長束:(上手から登場。腰の低い態度で)あの……すみません。舞さんの彼氏の?
増田:増田です。あ、じゃあ綾子さんの彼氏の?
長束:長束です。
増田:はじめまして。
長束:はじめまして。……すみません。電車が点検とかで30分も遅れちゃって。
増田:いや、いいです。大丈夫ですよ。
長束:……。
増田:……。
長束:ところで、女性陣は今トイレかどこかですか?
増田:いえ、まだ二人とも来ていないですけれど……。
長束:え? でも、僕が遅れるってメール送ったら「わかった。皆で待ってる」って返信が来ましたけど。
増田:それあれじゃないですか? 綾子さんも遅刻していて調子を合わせただけじゃないんですかね?
長束:なるほど。それで、僕より先に来たら時間通り着いていたって顔をするっていう……。
増田:そうですね……。
長束:…………。いやあ、二人には早く来てもらわなきゃ困りますよね。
   ほら、今日ってダブルデートだって言っても元々仲の良かった女の子同士が計画した事で、僕らは初対面じゃないですか。
   なんていうか、何喋ったらいいかわからなくて気まずいじゃないですか。
増田:あ、言っちゃいますかそういう事!? ……ざっくばらんな人だなあ。
   あの、じゃあ綾子さんとはどこで知り合われたんですか?
長束:そうだなあ。あれは一年くらい前だったかなあ……
増田:(ポケットから携帯電話を取り出し)あ、すみませんメールです。舞からだ。
長束:(同じように携帯電話を取り出し)僕も彼女からメールです。
増田:えーと何々
   「増田君へ今まで騙していてごめん。実は私と綾子はレズビアンでずっと前から恋人同士だったんだ
    でも、そんな事がバレたら周りからどんな目で見られるのか怖くて、増田君と付き合ったのもカモフラージュだったんだ。
    今日もダブルデートをする振りをして二人だけの秘密のデートをするつもりだったけれど、これ以上周りの目を気にして行くのは嫌なの
    だから二人で、遠い遠いレズビアンが冷たい目で見られないところへ行きます。今まで本当にありがとう。そしてごめんなさい。舞」
長束:僕のところにも名前以外は全く同じ内容のメールが届いています。
増田:なんだよこれ……。
長束:ひどい話ですよ。メール使い回しじゃないですか!
増田:どこに怒ってるんですか! 僕たち裏切られたんですよ!
長束:それにしても別れの言葉くらい個別に用意いいじゃないですか!
増田:彼女たちはその程度の情すら持ち合わせていなかったんですかね……。はあ……。
長束:……じゃあ、行きましょうか。
増田:どこへ?
長束:遊園地ですよ。今日ダブルデートで行く約束でしょ。
増田:あなた何言ってるんですか! なんでこの状況で遊園地に行かなきゃいけないんですか!
長束:だって考えてくださいよ。僕らは彼女に裏切られていたんですよ。
   二人ともメールじゃごめんだなんて言ってますけれど、心の中じゃ絶対笑っているんですよ。
   そんな彼女の裏切りにもめげずに遊園地を楽しむことで、傷ついていないよってことをアピールするべきなんですよ!
増田:誰に向けてのアピールなんですか!
長束:自分自身に対して。
増田:ただの強がりじゃないですか!
長束:じゃ、行きましょうか。
増田:行きませんよ! ただでさえ男二人で遊園地ってだけでも嫌なのに、初対面のそれも傷心の二人でなんて絶対嫌ですよ。
長束:じゃあ、今から男二人で行っても気にならないくらい仲良くなりましょうよ。
増田:どれだけ猛スピードで打ち解ける気ですか!
長束:一年ちょっと前のサークルでの飲み会です。
増田:……何がですか?
長束:綾子と知り合ったきっかけですよ。さっき答えられなかったんで。
増田:別にどうでもいいですよ。場をつなぐために訊いたんで特に知りたくもないし。
長束:ほら、マシマシマシタングが訊いてたからさ。
増田:呼ばれた事ないですよそんなあだ名! 
長束:これで大分打ち解けられましたね。じゃあ、行きましょうか。
増田:打ち解ける沸点低すぎでしょ! ……でもまあ、お互い同じ痛みを抱えているわけですからね。
   まだ朝早いから酒は飲めないかもしれないですけど、どこかでとことんグチりましょうか。
長束:いいですね。実は僕いい店知ってるんですよ。
増田:え、どこです?
長束:はい。ジェットコースター前のチュロス屋です。
増田:結局、遊園地じゃないですか! 何でそこまでこだわるんですか!
長束:実は今日、遊園地に行った後、彼女と予約した最高級ホテルのスイートルームに行って、
   そこで夜景を見ながらプロポーズをするつもりだったんです。
増田:そうだったんですか……。
長束:はい。(ポケットから取り出すしぐさ)これがそのスイートの鍵です。……受け取ってください。
増田:なんでですか!
長束:もう、僕が持っていてもしょうがないですから。
増田:僕が持ってる方がしょうがないですよ!
長束:これが、彼女に渡すつもりだったダイヤの指輪です。……受け取ってください。
増田:だからなんで僕に押しつけようとするんですか。
長束:このダイヤだって、あなたにつけてほしいって思ってるはずです。
増田:そんなわけないでしょ。
長束:だから、せめて彼女と一緒にいるつもりであなたと遊園地に行くことで、傷を癒したかったんです!
増田:そんな理由があったんですか……。
長束:だから遊園地に行ってもカップルっぽく、僕がソフトクリームを買ってきて「おまたせー」とか言いながら走ったらうっかり転んで、
   それを見た彼女に「もう。ドジなんだから」って指でおでこをコツンってされたりしたいんですよ。
増田:なんですかその気味の悪いシチュエーション。一緒に行ったらそんな事しなきゃいけないんですか!
長束:お願いします!
増田:嫌ですよ!
長束:最終手には鍵と指輪を……。
増田:受け取らないですよ! てか、なんですかそれ周りから見たら完全にホモのカップルじゃないですか!
長束:いいじゃないですか! どうせ予定通りダブルデートに行ってたってレズのカップルと男二人の組み合わせだったわけでしょ!
   そんなの、他人から見たらレズのカップルとホモのカップルにしか見えないんだから一緒じゃないですか!
増田:思われないですって! 表面上は男女二組のカップルだったんですから。
長束:そんなわけでじゃあ、行きましょう。
増田:嫌ですよ! ホモのカップルなんて気持ちの悪……
   ハハハ。こういう偏見があるからきっと二人は駆け落ちしたんですかね……。
長束:そうかもしれませんね。
増田:おかしいと思われるかもしれませんが、こんな目にあってもまだ彼女の事が好きで、
   友達の関係でもいいから彼女の戻ってきてほしいって思っているんですよ。
長束:僕だって同じ気持ですよ。……もし、彼女たちに同性愛への偏見がなくなったって伝われば、戻ってきてくれるんですかね。
増田:そうかもしれませんね。でも、どうすれば……。
長束:僕らも同性愛者になればいいんじゃないですか?
増田:いいですね!
長束:じゃあ、早速男二人なんだしカップルになりましょうか。
増田:そうしましょう!
長束:じゃあ、遊園地にも。
増田:行きますよもちろん!
長束:ソフトクリーム持ってきて転んだら?
増田:(長束のおでこをつつきながら。以降のセリフは女声で)もう。ドジなんだからー。
長束:わかってるー!!! そうそう、遊園地の後なんだけど。これ最高級ホテルのスイートルームの鍵なんだけど……
増田:もらうもらう!!!
長束:やったー! で、これがダイヤの指輪。
増田:うわあ! ありがとう!
長束:よーし、せっかくだから、ここではめて行こうか。ほら指出して。
増田:(左手を差し出す)
長束:(指輪をはめるマイムをしながら)ほら。ピッタリ。
増田:すっごーい! ていうか、綾子さん指太くなーい?
長束:おいおい。綾子って誰の事だよ?
増田:(わざとらしく口に手を当てて)あっそうか。あたしったら変なこと言っちゃった!
二人:アハハハハハ
長束:よーしじゃあ遊園地に……(腕を突き出す)
増田:(長束の腕にぶら下るように腕を回しながら)出ぱーつ!
    ……(前にいる人物に気づいて)舞!
長束:綾子!
増田:え? 何? 一体どういう……ドッキリ!! 二人でコッソリ見ていて笑っていたけれど、さすがに危なくなったんで止めに入った。
   なんだ、もうそうだったんだ。すっかり信じちゃったよ。
   ……で、ひとつ質問したいんだけれど長束さんがプロポーズするって言った時二人はどうしてたの?
   そろって爆笑。……ひどくないそれ!?
長束:まあ、いいじゃないですか。
増田:そうかもしれませんけれど……。ところで、綾子さん、心なしかガタイがよくて喉仏があるような気がするんですが……。
長束:あ、こいつ元々男だから。
増田:え! そうなんですか!?
長束:よし、じゃあ気を取り直してダブルデート行こうか。
増田:男三人と女一人だけれど、一人は元男だから男女二人同士になってダブルデートで……ってもう分かりづれえ!

 

〜採点結果〜

最高 最低 標準偏差 お気に入り 採点人数 平均
75 13 18.22
8名 50.75



〜詳細〜


★=お気に入り
100  
   
   
90  
   
   
80  
   
  75★(ザララ)
70  
   
  65(佐々木ヒデタカ)
60 60(FAN)・60(哲夫)
   
  54(きょくにゃん)
50  
   
  42(ジンガー)
40  
  37(井島)
   
30  
   
   
20  
   
  13(ほしの)
10  
   
   
0  
inserted by FC2 system