広田松森

漫才/男気ヂャンケン

広田：よし、男気ヂャンケンだ。
 
松森：唐突すぎる。漫才の導入としてかなりあり得んだろ。
 
広田：あのな。草食系男子と言われた俺たちだって、薬包紙ぐらいの男気はあるだろ。
 
松森：薬包紙って。男気を語るうえで出てくる単語じゃないな。
 
広田：でも、そんぐらいちっぽけでも、男気があるってとこは見せたいだろ？
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松森：まぁ、一理あるな。
 
広田：じゃあ、男気ヂャンケンしかあるまい。
 
松森：・・・ジャンケンじゃないのか？
 
広田：やるのはジャンケンだがヂャンケンだ。男気だからな。
 
松森：・・・ヘタにツッコむと長そうだから、もう聞かんでおこう。
　　　じゃあ、具体的にそれはどうやる？
 
広田：まず脱ぎます。
 
松森：まずだけで説明できない文章が出てきたぞ？
　　　なんだ、いきなり全裸か？
 
広田：残念だが、倫理的に上半身だけだ。
 
松森：倫理的に残念がるな。倫理的なら安心しろ。
 
広田：上半裸身ぐらい晒せないとな。
 
松森：・・・わかるようなわからんような。
 
広田：そして、ここでためらう奴は失格。
 
松森：ヂャンケンっつってるのにヂャンケンすらやらせてもらえんのか。
 
広田：もう、脱げない奴ァ、ブラジャーしてるって認識でも可。
 
松森：どんな偏見だよ。男らしくないとこまではギリで容認してやってもいいが。
 
広田：とにかく、まずブラ男はここでまず離脱するわな。
 
松森：認識しちゃったな。少なくともお前は。
 
広田：で、ここでヂャンケンなんだが、掛け声は野太く。
 
松森：そんなとこまで見るか。
 
広田：「お゛ーーとこぎ　ぢゃーん゛けん」ぐらいの感じで。
 
松森：・・・これもわかるようなわからんような。
 
広田：そして、野太い声が出ない奴は失格。
 
松森：ヂャンケンっつってるのにヂャンケンすらやらせてもらえんのか。
 
広田：声が出せない奴ァ、ヴィジュアル系バンドのヴォーカルって認識でも可。
 
松森：どんな偏見だよ。別にそれはそれでいいだろう。メジャーデビュー目指せばいいだろう。
 
広田：とにかく、ヴィジュアル系バンドのヴォーカルが失格。
 
松森：認識しちゃったな。明日から動画サイトの歌ってみた動画が乱立する予感だぞ。
 
広田：あと、ヂャンケンの時のポージングも大事だな。
 
松森：ポージング？
 
広田：「お゛ーーとこぎ　ぢゃーん゛けん」の「お゛」と「ぢゃ」の時に男らしいポーズを2回ほどやる。
 
松森：例えばどんなんだ？
 
広田：ベタなのは、ボディビルっぽいのだな。
 
松森：・・・また絶妙にわかるようなわからんような。
 
広田：そして、男らしくないポージングの奴は失格。
 
松森：ヂャンケンっつってるのにヂャンケンすらやらせてもらえんのか。
 
広田：男らしくないポージングの奴ァ、読モって認識で可。
 
松森：どんな偏見だよ。あれはあれで男らしいのあるだろう。
 
広田：とにかく、読モが失格。
 
松森：認識しちゃったな。明日からファッション雑誌に応募依頼が殺到する予感だぞ。
 
広田：で、「ぢゃんけんポン！」でジャンケン。
 
松森：急にオーソドックスになったな。振り幅がハンパないが。
 
広田：おおよそこんな流れだから、1回やってみるか。
 
松森：やらんといかんか？
 
広田：説明するよりもやった方が早い。
 
松森：今の一言でここまでのすべてが台無しになるぞ。
 
広田：じゃあ、男気ヂャンケンを始める前に、儀式をやっておくか？
 
松森：？
 
広田：広田です。
 
松森：松森です。
 
二人：広田松森です。
 
広田：決まったな。ツカミの自己紹介。
 
松森：ネタはもう大詰めに近いんだがな。
 
広田：よし、やろう。（上半身だけ脱ぐ。）
 
松森：（上半身だけ脱ぐ。）
 
広田：いくぞ。
 
松森：おう。
 
二人：お゛ーーとこぎ（ポージング取りながら）
　　　ぢゃーん゛けん（ポージング取りながら）
　　　ぢゃーん゛けーんポン！
 
広田：（グー）
 
松森：（チョキ）
 
広田：ナイス男気！
 
松森：・・・負けたんだが。
 
広田：男気にヂャンケンの勝敗は関係ない。如何に男気を見せられるかだ。
 
松森：・・・ジャンケンである必要性はないよな。
 
広田；あー。まったくないな。
 
松森：その開き直りが一番の男気じゃないか！
　　　もうやめさせてもらうわ！