kissしてシクラメン

漫才/C U alone myself



峰岸:どうもー、kissしてシクラメンです!
 
花笠:ハッハッハッ、待たせたな! 私が来たからにはもう安心だぞ、花笠オトコマエだ!
 
峰岸:誰も困ってはいないだろうけどね。いやー、これでも女の子二人で漫才やってるんですけれども。
 
花笠:峰岸よ、最近の女子の間では一人でレジャー施設に行ったりする「おひとりさま」と言うのが流行っているそうだな。
 
峰岸:そうだねえ。私も良く一人で博物館行ったりお城巡ったりするよ。
 
花笠:私も良く一人でトイレに行ったりお風呂に入ったりするな。
 
峰岸:それは常に一人で行けよ! 怖がりかよ!
 
花笠:いやー、たまに背後に髪の長い白装束の女がいるんだよ。今もなんだけどな。
 
峰岸:憑かれてんじゃねえか! え、今もなの!? 今奇しくもトリオ漫才なの!?
 
花笠:しかし、おひとりさま上級者になると、映画館や遊園地などにもひとりで行くらしいぞ。ちょっと私には分かりかねるなあ。
 
峰岸:そうねえ、でもそれもそれで楽しいかもね。遊園地にみんなで行くのも楽しいけど、行く前に予定あわせるの面倒くさいし。
 
花笠:そうなると、女性の一人用の遊園地なんてのが出てくるだろうな。
 
峰岸:え、そう? そこまで需要あるかなあ?
 
花笠:じゃあ私の考えた女性のおひとりさま用の遊園地に、峰岸は遊びに来ると良いぞ! コントって便利だな!
 
峰岸:オッケー、あと便利とかそう言うことは漫才終わってから言ってね。
   あー、最近出来たおひとりさま向けの遊園地に遊びに来たなー! 寂しくは無いぞー! 私は一人が好きなんだー!
 
花笠:男は武器を取れ! 女子供は家から出るな! おい、貴様! 早く逃げろ! 死にたいのか!
 
峰岸:うぇ!? い、いきなり誰、そして何!? 遊園地なんだよねここ、遊園地なんだよね!?
 
花笠:女を守るためにいかなる困難にも立ち向かう、それが男……。それが、男……!!
 
峰岸:お姉さん? お姉さーん?
 
花笠:ハーッハッハッハッ! と言うわけでようこそ、オトコマエランド〜弾痕の残る背中で語れ〜へ!!
 
峰岸:やべえとこ来ちゃった! 来る前に予め名前を良く確認しとくんだった! ってか、あなた誰よ?
 
花笠:私か! 私はオトコマエランドのマスコットキャラクター、男姫だ!
 
峰岸:本当に何者なんだよ! 性別良く分かんない奴来ちゃったよ!
 
花笠:他にマスコットキャラクターには、三船敏郎・田宮次郎・勝新太郎・高橋克典がいるぞ。
 
峰岸:往年の名優が生身で!? あとなんで最後急に只野仁なの!? 言っちゃ悪いけど場違いよ!?
 
花笠:さあさあ、女子供は即刻帰れ! 男が廃るわ!
 
峰岸:ちょ、ちょっと待ってよ! あんた姫なんでしょ!? 女なんでしょ!?
 
花笠:男姫だ!
 
峰岸:だから知らないよそう言う設定は! 何よ、女の私は折角来たのに入れないの?
 
花笠:どうしてもと言うのなら、そこのチケット売り場で男らしさを証明出来るものを買ってきたら入れてやらないでもないぞ!
 
峰岸:チケット買えってことかよ! もっと端的な表現をしなさいよ! まったく……すいません、チケット幾らですかー?
 
花笠:はい男性は5000円、女性は1000円です。
 
峰岸:うわ、なにその出会い系喫茶みたいな値段設定! どうして女の子だけ値段五分の一なのよ?
 
花笠:言っただろう、女性のおひとりさま向けの遊園地だって。
 
峰岸:その割には女であることを理由にずいぶん罵倒されたけどね!? まあいいや、テーマパークが1000円なのはかなり安いほうだもんね。
   そのくらいなら諦めきれるかな。はい、1000円。
 
花笠:さあ、夢と魔法と汗の臭いの王国へようこそ!
 
峰岸:入った早々嫌な情報ありがとう! うわっ、ほんとだ。なんか濡れた犬みたいな臭いがする……。
 
花笠:いやー、だが惜しかったな。もっと早く来れば開園と同時に奥まで走って一番福に挑戦する権利が与えられたのに。
 
峰岸:何その開門神事! お正月に西宮えびすでやってる奴じゃないの! 開園ダッシュにそんな深い意味はないよ!?
 
花笠:さて、このオトコマエランドには一つしかアトラクションはありません! 漢だから!
 
峰岸:マジで!? 頭おかしいんじゃないの漢って! いきなり楽しみがガッツリ減ったよ! まあいいや、まずそのアトラクションに案内してよ。
 
花笠:では、ようこそ! ここがオトコマエホラーハウスです!
 
峰岸:お、お化け屋敷かー。これまた一人ではいるのは中々勇気いるなあ。
 
花笠:このホラーハウスは、本物の廃道場を利用したお化け屋敷です!
 
峰岸:男らしいところ選んだねまた! 廃校とか廃病院とかは聞いたことあるけど廃道場て! 熊に殺された武道家の霊とかいそう!
 
花笠:ここには、現世に未練を遺した九十九人の霊達が彷徨っているぞ! 男らしくないな!
 
峰岸:そこは許してあげてよ! 全員が全員スパッと死ねるわけじゃないのよ!
 
花笠:それでは、恐怖の道場へ、行ってらっしゃい! 百人目にならないようにな……ギィーバタン!
 
峰岸:おおう、入ってしまった。中は真っ暗だ。怖いなー。……あと汗臭さ凄いなー……道場なんだもんなー。
 
花笠:シクシク、シクシクシク……。
 
峰岸:通路の奥から泣き声が聞こえてくる……。わっ、青白い人が立ってる!
 
花笠:えっ、その声は、小百合? そこにいるのは小百合なのか!? そこにいるのは!
 
峰岸:わあ! 急に幽霊がこっちに向かってきた! ち、違うよ! 私の名前は喜久子よ!?
 
花笠:小百合……じゃないのか……。すまない、動転していた、失礼した……。実は、私は幽霊なんだ……。
 
峰岸:え、幽霊の自己紹介始まっちゃったけど。
 
花笠:私は生きていた頃、ある戦争の時に大切な女性を守って命を落としたんだ。
   それから、彼女の事を想いながら、ずっとこのお化け屋敷で祈り続けているんだ。
 
峰岸:え、何それ。切ない。
 
花笠:ごらん、ここに柱の傷があるだろう? 私はここで小百合と共に育った。背比べをしたな……。
 
峰岸:心がきゅーって締め付けられる展開来た! 幽霊一人になんてドラマ性なのよ!
 
花笠:でも、私は大切な人を守って死ぬことが出来て、私は幸せな幽霊だよ。
 
峰岸:うわー、何だよもう……この夏一番泣けるラブストーリーだよ……。
 
花笠:このホラーハウスの住人はそんな奴ばかりだ。
 
峰岸:そんな奴ばかりなの!? そんな切ない幽霊がいっぱいいるの!? 何この恐怖より切なさが先に来るお化け屋敷!
   キュン死にしそう! 涙で死ねそう!
 
花笠:97人ぐらいそんな奴だ。
 
峰岸:ほぼ全員! 後二人どんな奴よ! 肩身狭いんだろうなあ! 内心辛いんだろうなあ! 
 
花笠:さあ出口はこっちさ、怖かったら手を握っていてあげるよ。
 
峰岸:しかも紳士的だ! 鼻血出る! 一人で遊園地に来るような寂しい女は漏れなく萌え死ぬ! 私のこと暫くの間小百合って呼ばせたくなる!
   あー駄目だここ。微塵も怖くないよ。別の意味で心臓バクバクするし、リタイアしちゃおう。非常口どっち?
 
花笠:あっちだけど、男は背中を見せないから非常口は溶接されて開かないんだ。
 
峰岸:馬鹿じゃねえの!? もしもの時は座して死を待てってこと!? 良く見たら非常口のマークも仁王立ちしてる! 男らしい!
 
花笠:では、このホラーハウスの出口まで案内してあげるよ。と、言うわけで、このオトコマエ列車に乗りたまえ!
 
峰岸:って、あ、ライド系のアトラクションだったのこれ!? ディズニーランドのホーンテッドマンションみたいな奴だ!
 
花笠:オトコマエ列車は男前だから、機関車トーマスみたいな感じだぞ。
 
峰岸:ほんとだ! 乗り物の先頭に顔がついてる! 気持ち悪い!
 
花笠:お、珍しいな! 高倉健の顔の列車だぞ! 良かったな!
 
峰岸:良さがさっぱりわかんないよ! むしろ見覚えのある顔のせいで気持ちの悪さが天井知らずだよ!
 
花笠:馬鹿言うな! このオトコマエランドにはな、隠れ健さんと言って園内のいたるところに高倉健さんが隠れているんだぞ! マニアは一日中健さんを探しているぐらいだ!
 
峰岸:むしろマニアいんのかよ! そんな隠れミッキーみたいなのいらないよ! まあ良いや、もう乗っちゃうからね。
 
花笠:フフフ、ようこそ恐怖の男前の館へ……。
 
峰岸:改めて聞くと気味の悪い館ね。
 
花笠:ガタンゴトーン、ガタンゴトーン。
 
峰岸:動き出したね。
 
花笠:ドンドコドーン、ドンドコドーン。
 
峰岸:……何の音?
 
花笠:和太鼓だ。
 
峰岸:和太鼓!? うわっ、本当だ! ふんどし一丁の男達の霊が和太鼓ドンドコやってる!
 
花笠:いやあ男前だなあ。怖いなあ。
 
峰岸:怖くないよ!? むしろ恐怖の館にほぼ全裸の屈強な男達を十人も並べた神経は怖いけども!
 
花笠:ガタンゴトーン、ガタンゴトーン。
 
峰岸:おぉ、また進んでいく。
 
花笠:ウォウ、ウォウウォウウォウウォウォウ、ウォウォウォウォウォウウォウ。
 
峰岸:……は?
 
花笠:ウォーウ、ウォーウ、ウォウウォーウォウォー、ウォウォウォウォウウォーウ。
 
峰岸:……あの、何?
 
花笠:とんぼだ。
 
峰岸:とんぼ!? ……とんぼ!?
 
花笠:長渕剛の、とんぼだ。
 
峰岸:曲か! 前奏のところかよ! 清原和博が打席に立つときに流れてた奴だよ! ってことは何よ、長渕剛の霊でもいるわけ?
 
花笠:そうだな、いや、あれを見ろ!
 
峰岸:何見つけたの?
 
花笠:長渕剛のモノマネ芸人、長渕よわしだ! ……男らしくない!
 
峰岸:良いじゃないモノマネでも! モノマネでも長渕剛っぽいから男らしいほうだと思うよ!?
 
花笠:だが見ろ、男らしくないから和太鼓の男達にバチでボコボコにされてるだろう?
 
峰岸:怖っ!! ふんどし一丁の十人の男達が一人を袋叩きにしてる様子なんて見せないでよ!
   オラーとか言ってる! 鬼の形相だよ! 男の凶暴性怖い! 暴力と言う角度からの恐怖の館は嫌だよ!
 
花笠:ガタンガタンガタンガタン……。
 
峰岸:うう、通り過ぎていく。助けられなくてごめんね……って、なんかこの列車、坂のぼってない?
 
花笠:ピタッ。
 
峰岸:止まった、ってことは……落ちる!
 
花笠:ゴオオオーーッ、バッシャーン!
 
峰岸:キャーッ! うわー、いきなりスリルあったなあ、濡れちゃったあ! あははは、でも水に濡れるのもアトラクションだから許せるかな!
 
花笠:いや、水じゃなくて汗だぞ。
 
峰岸:汚ぇ!! 何この列車汗に飛び込んだの!? 男らしさと汚らしさって切っても切り離せないものなの!? もっと清潔なアトラクションが良いよ!
 
花笠:ばさり。
 
峰岸:え、何?
 
花笠:この屋敷に住む霊がいつの間にか峰岸に上着を掛けてくれたようだな。
 
峰岸:何その思い出したような紳士的行為! 惚れるわ! ちょいちょい乙女心くすぐりやがって! 罪深いなもう!
 
花笠:ハッハッハッ、と言うわけで男姫だ! どうだったかな! 恐ろしかったかな! 除霊! 除霊!
 
峰岸:痛っ! 痛っ! 塩ぶつけてくるなよ! 清められてる気がしないよ! いやまあ、全体的に嫌なばかりだったよ……。
 
花笠:そうか、お気に召さなかったか。ならば、こう言う時は甘いものでも食べたらどうだ?
 
峰岸:あ、そうだね。テーマパークの食べ物って高いけど、妙に欲しくなっちゃうんだよね。何売ってるの?
 
花笠:ソフトクリームが売ってるぞ!
 
峰岸:わーい買う買う!
 
花笠:どうぞ! 熱いのでお気をつけ下さい!
 
峰岸:どゆこと!? 何で熱いの!? ソフトクリームでしょ!?
 
花笠:コーンの部分は焼トウモロコシなんだ。
 
峰岸:そこ男らしくしなくて良いよ! ソフトクリームの部分ドロッドロになってるでしょうが!
   あーもう駄目オトちゃん! もうやめてよ! しゅうりょーう!
 
花笠:どうした峰岸よ、悲しいことでもあったのか?
 
峰岸:何かもう終始悲しかったよ! 悲しみの雨が降るよ! 男臭すぎて、こんな遊園地女一人じゃ来れないよ!
 
花笠:そうか、ならば私がおひとりさま専用の動物園を考えてやろう。
 
峰岸:いい加減にしなさい!
 
二人:ありがとうございましたー!

 

〜採点結果〜

最高 最低 標準偏差 お気に入り 採点人数 平均
86 65 6.52
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9名 75.44



〜詳細〜


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