ボルケーノ

漫才/ヲ墓参リ



丘山: 突然なんですけど、『お墓参り』を気にするようになると、自分が大人になったような気がしない?

藤滝: お墓参り?

丘山: ほら、お墓参りって、昔は『親に無理やり連れて行かれるだけの行事』だったじゃない?
    それが去年あたり急に「自発的に行かなきゃな」って思い始めてね。

藤滝: あ〜確かにそういうの気になり出すと、ちょっと大人になった気はするね。

丘山: で、去年のお盆、「大人として、1人でお墓参りに行ってみよう」と思い立ったんだよ。

藤滝: いいね。そういうのって巡り巡って自分のためになったりするからね。

丘山: そうそう。だから俺急いで初のパスポート作りに行ってさ。

藤滝: ……ん?

丘山: パスポートの写真って色々厳しいんだな。父親の写真持ってったらダメだって言われて。

藤滝: 当たり前だろ。ていうか、『お墓参り』に行こうとしたんだよね?

丘山: 無事作ったはいいけどさ、飛行機で十数時間もかかるんだな、エジプトって。

藤滝: お前どこのお墓行こうとしてんの!?
    歴史的建造物の方のお墓!?

丘山: 空港出ても、昔の記憶すぎてなかなか道が思い出せなくて。

藤滝: 思い出すもクソもねーよ!初のパスポートの時点で初だよ!

丘山: お墓といえば、だいたい入口に狛犬があると思うんだけど、
    確かに狛犬らしき石像もあって、「ここだ!」と思って。

藤滝: 多分それ狛犬じゃねぇよ!どっちかと言ったらライオンだよアレ!

丘山: でも普通狛犬って2つで1つじゃん?でも1つしか無くておかしいなぁと思ったから俺隣にもう1コ作ったよ。

藤滝: 何やってんだよ!?世界的な作品に何足してんだよ!?

丘山: 俺はその後必死に墓という墓を拝んでまわったんだけど、うんともすんとも言わねぇの。

藤滝: 言わねぇよ!何が起きると思ってたんだお前!?

丘山: しかもいくら探しても『墓』って文字が彫ってないの。

藤滝: ねーよ!書いてあるとしたら壁画の絵文字だよ。

丘山: いくら探しても「最近の若い者は」としか書いてねぇの。

藤滝: 確かにそういう意味の壁画があるって言うけども!?

丘山: で「子供の頃、親に無理やり連れて来られたお墓はここじゃねぇ」と思って。

藤滝: 絶対そこじゃねぇよ!初めてパスポート準備した時点で違うと思え!

丘山: 「なんで俺はラクダに乗って夕陽を眺めてるんだろう」と思って。

藤滝: エジプト満喫してんじゃねぇかよ!

丘山: 「だいたいスフィンクスが2個並んでるとか何だよ、ここエジプトですらねぇよ」と思って。

藤滝: お前の作品だろーが!片方はお前の急ごしらえだろ!

丘山: 「栃木じゃねーか!」と思って。

藤滝: 栃木でもねーよ!東部ワールドスクウェアだとしても1個だよ!

丘山: エジプトから帰ったら親族が次々高熱で倒れたよ。

藤滝: 祟り起きてんじゃねーか!

丘山: 墓が増えるとこだったよ。

藤滝: ブラックの度が過ぎるわ!エジプトの祟りってヤベーんだよ!

丘山: 日本戻ってから色々調べたら『平将門の墓』があるって知ったんだよ。
    俺「ここだ!」と思って。

藤滝: ここじゃねえ!お前の「ここだ!」は基本ここじゃねえ!

丘山: 夜中だったんだけど、急いでビデオカメラ持って向かったんだよ。

藤滝: 心霊スポットと知っての凶行か!

丘山: やれることは全部やった。墓は洗ったし、お土産でネックレスも供えたし。

藤滝: お前生首の神経逆なでしてんじゃねぇよ!

丘山: 拝みながら思ったんだけど、「あれ?俺が来るべき墓ってここだろうか」ってなって。

藤滝: ここじゃねぇよ!勇み足にも程があるんだよ!

丘山: 子供の頃、親に無理やり連れて来られたお墓は確かにここだったけど、でも「ここじゃねぇ!」と思って。

藤滝: それはここなのかよ!?何がしたかったんだ親は!?

丘山: 帰って来てから、友人が次々と事故に遭ったよ。

藤滝: 祟り拡大してんじゃねーかよ!なんでお前は何ともねーんだよ!?お前に何か起きろよ。

丘山: ここに来て、俺はあることを思い出した。ずっと昔、親からこんなことを言われたんだ。
    「おじいちゃんおばあちゃんはね、お星さまになって私達を見守ってくれてるのよ」
    俺「これだ!」と思って。

藤滝: どう思ったんだよ!?

丘山: 「NASAだ!」と思って。

藤滝: 思うんじゃねぇ!お前あるか?昔の記憶にNASAに関わったことが!

丘山: 場所調べたら、なんか北関東のあたりに「なさ」って地名があって「ここだ!」と思って。

藤滝: …多分那須だよそれ!エヌ・エー・エス・ユー、NASUだよ!

丘山: 「なんでNASAなのにパスポート使わないんだろう」と思ったけど、でも「ここだ!」と思って。

藤滝: 何でだよ!?そこまで疑問浮かんでなぜ正解から遠ざかる!?

丘山: 2日かけてゆっくりお参りしたよ。
    日光東照宮は立派だったし、鬼怒川温泉は気持ちよかったし、東武ワールドスクウェア行ったらスフィンクスは1個だった。
    
藤滝: 確認してきたんだ!あとそれ、全部那須じゃねぇ!全部日光!

丘山: でね、日光東照宮の時点でちょっと思ったんだけど、「あれ?ここってNASAじゃないな?」ってなって。

藤滝: 序盤で気付いてんじゃねーか!その上で温泉入ってんじゃねーよ!

丘山: 「栃木じゃねーか!」と思って。

藤滝: 栃木だよ!それに関しては合ってるよ!

丘山: 「おかしい、なぜアルバムが3冊目に突入しているのだろう」ってなって。

藤滝: 充実した夏休みじゃねーか!

丘山: 栃木から帰ったら世界中で病気が大流行。

藤滝: 何の影響だよ!?今回旅行しただけだろ!?

丘山: 鬼怒川の鬼の怒りがこんな所にまで…。

藤滝: いち地名にそこまでのパワーねぇよ!

丘山: そして季節は春。

藤滝: 半年経ったよ!お盆は失敗に終わったよ。

丘山: 俺がふと公園の前を通りかかると、そこには満開の桜があった。
    そこでひらめいた。ほら、桜の木の下は死体が埋まってるって言うじゃん?俺「ここだ!」と思って。

藤滝: お前どこにヒント見いだしてんだよ!?

丘山: 俺は急いでシートを敷いて、怪我が治った友人を集めに集めて、そこからもう飲めや歌えのドンチャン騒ぎ。

藤滝: ただの花見じゃねーか!もう100%目的見失ってんだろ!

丘山: 寄ってくる警官。

藤滝: 苦情出てんじゃねーかよ!近隣に迷惑かけんなよ。

丘山: 高熱で倒れる警官。

藤滝: なんでだよ!?お前が呪いの発信源だろソレ!

丘山: やがて日も暮れ、解散になった後、帰り道の途中で俺はある墓地を発見したんだ。
    誘われるように入って行き、やがて1つの墓の前に立っていた。「丘山家の墓」

藤滝: ……。

丘山: 今まで、色んな所を探しまわったけど、でも、本当に大切なお墓は、こんなに近いところにあったんだ……。

藤滝: …なに良い話みたいにしてんだよ!?幸せは意外と近くにあったみたいな!?

丘山: 横に小さく彫ってあるんだよ。「丘山家先祖 ここにナムル」

藤滝: 「眠る」じゃなくて!?「ここにナムル」はただの配膳だよ。

丘山: 俺はやれるだけのことをやった。丁寧に洗ったし、花も買ってきた。でも墓はうんともすんとも言わない。

藤滝: なんで頑なに何か起きると思ってんだ!?

丘山: そこで目に入ったのが「ここにナムル」
    「ここにナムルを設置するんだ!」と思って、急いで韓国に飛んだんだよ。

藤滝: 近くで買え!なんで逐一遠出したがるんだよ!?

丘山: ナムルを供えたら、突然俺の前に2人の人影が現れた。「我が孫よ。」
    …天国のおじいちゃんと地獄のおばあちゃん。

藤滝: 片方何やったんだよ生前!?

丘山: そしたらお爺ちゃんが俺に言った「墓参りに来てくれてありがとう。結婚相手はよく選べよ」
    婆ちゃんも俺に一言「崇め奉れ」

藤滝: ババアの性格が悪いのは分かった。

丘山: こうして無事、墓参りを終えることが出来たよ。2人とも笑顔で消えていった。爺ちゃんからは教訓までもらっちゃって。

藤滝: 自分が結婚後に苦労しただけだろ。

丘山: でも、確かに相手はちゃんと選ばないと。よく『結婚は人生の墓場だ』って言うもんな。
    ……ハッ、これ

藤滝: これじゃねえ!墓に反応すんじゃねぇよこれ以上!

丘山: よし!大人として、次は結婚を意識することにするよ!

藤滝: いやもういいよ。

 

〜採点結果〜

最高 最低 標準偏差 お気に入り 採点人数 平均
90 50 22.73
★★★
7名 77.86



〜詳細〜


★=お気に入り
100  
   
   
90 90★(8823)
  89★(きょくにゃん)
  81(ジンガー)・82★(山下)
80  
  79(藍殿TT)
  74(FAN)
70  
   
   
60  
   
   
50 50(恵原局長)
   
   
40  
   
   
30  
   
   
20  
   
   
10  
   
   
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